2015夏アニメ「がっこうぐらし!」1話感想。どんでん返しの効用。

がっこうぐらし!」観ました。なんかほんわか日常系のように見せて一話で凄いどんでん返しがあるという評判を聞いて。始まる前は全くノーチェックでしたが、まぁ、事前情報無かったらふつーにスルーしちゃうなこれは。

とりあえず観てもらえばわかると思うのですが、一話ラスト四分の急転ぶりはやはり驚嘆させられます。面白いなー。

ふと、以前阿刀田高がこんなことを書いていたのを思い出しました。

「私見を述べれば……そして、これはとても大切なことだと考えるのだが、どんでん返しはただひっくり返ればそれでいいというものではあるまい。大きくひっくり返って読者を驚かすことだけが第一義ではない。
どんでん返しの美学は、ひっくり返ったとたんに……そう、一条の光が射し込む、その光の中に、それまでには見えなかったもうひとつの人生が、もうひとつの人間性が鮮烈に映る、そこにこそあるのではないのか。」(阿刀田高「短編小説のレシピ (集英社新書)」P230)

このような点で、本作は非常に基本に忠実かつ巧みなどんでん返しを行っていますね。かわいい女の子たちの明るく楽しい学校生活から、悪夢のような現実へと置かれた世界が一変するとき、まさに禍々しい「一条の光が射し込む」描写もありますが、特に主人公ゆきの「それまでには見えなかったもうひとつの人生が、もうひとつの人間性が鮮烈に映る」わけで、それによってゆきにかかわる登場人物たちの人となりもまた、がらりと一変して見えるようになります。

海法紀光氏とともに本作の原作・脚本を担当するニトロプラスに所属する脚本家・虚淵玄氏の作品Fate/Zeroでもこんな台詞がありました。

「恐怖というものには鮮度があります。怯えれば怯えるほどに、感情とは死んでいくものなのです。真の意味での恐怖とは、静的な状態ではなく変化の動態――希望が絶望へと切り替わる、その瞬間のことを言う。如何でしたか?瑞々しく新鮮な恐怖と死の味は」(Fate/Zero)
血だまりスケッチとは (チダマリスケッチとは) [単語記事] – ニコニコ大百科」より孫引き

一話をあらためて見直すと、というか繰り返し見直さずには居られなくなるわけですが、「希望が絶望へと切り替わる、その瞬間」に向けて様々な描写で着々と伏線を張り巡らせていることがよくわかります。

特に「日常系」アニメのお約束をうまく使っている。「日常系アニメ」の特徴は、想定されうる様々なコンフリクトを可能な限り排除しあるいは最小化させることで概ね可愛い少女たちによる明るく楽しい関係性を描くことに特化した点かと思います。例えば「たまゆら」は怒りや憎しみの感情と利害関係の衝突を排除しつつ喪失と再生、善意と相互扶助の関係に純化させ、「きんいろモザイク」は執着や依存をギャグに昇華させて関係性を再構築しつつ一種不条理な明るい世界を作り、「のんのんびより」も田舎や・自然環境特有の緊張感・死の香りを丁寧に消し去りあるいは隠し味として使いつつ独特の優しい均衡を保ったここではないどこかの農村の子どもたちを描いています。

いわば日常系はコンフリクトの最小化という、物語としては不安定な土台の上に立つ、穏やかな日常であるかのような外観を持った非日常のユートピアであるわけですが、本作はその日常系が持つ不安定さを逆手に取って伏線として活かしていますね。日常系アニメを視聴する上でのお約束としてキャラクターの言動の不自然さとか、「リアルじゃない」様々な設定とかは概ね見過ごし、あるいはそういうものとして許容しつつ見ますが、むしろそここそ、ラストのどんでん返しへの伏線として機能するところが一話の特徴ですね。その視聴者が「日常系」故に細部の不自然さに寛容になるという盲点を突いている。

一方で、日常系アニメであればその不安定さを極力覆い隠そうとするし、不自然さを極力感じさせないような製作上の工夫と努力をするわけで、その作品世界へのスムーズな没入に日常系アニメの成否がかかっているわけですが、逆に本作だと最後のどんでん返しのために、そこをある程度ベタに描写する必要があります。十五分過ぎたあたりぐらいから、少々くどいなと軽く飽きかけていたし、そういう感想を持った人は少なからず居たように見受けられます。それがラストのどんでん返しで、「日常系」的くどさを彼女の狂気と彼女たちの思いやりとを際立たせる伏線として使っていたことに気付かされるわけです。だから、途中ありきたりでつまんないと思ったらその瞬間すでに罠に嵌っていて、再度見直すと全く違った情景が見えてくるという作りですね。

このような意味で、日常系アニメはいつでも非日常系アニメに転化しうることを、ユートピアとディストピアとは表裏一体であることを改めて認識させてくれる一話でした。「進撃の巨人」のアニメ一話も同じ構図ですよね。「その日人類は思い出した、やつらに支配されていた恐怖を」です。

とりあえずみーくんかわいいよみーくん。おそらくサバイバルホラー系になるであろう二話以降楽しみです。華麗に決まったどんでん返しの後こそが視聴者のハードル上がりまくるので大変なんだよねぇ。

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追記
原作海法紀光氏をニトロプラス所属と記載していましたがフリーランスとの指摘があり、確認した上で訂正しました。(参考参考参考)番組HPに海法紀光(ニトロプラス)と記載されていたので勘違いしていました。

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