「人類の足跡10万年全史」スティーヴン・オッペンハイマー著

人類の足跡10万年全史
人類の足跡10万年全史
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スティーヴン オッペンハイマー
草思社
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人類は、いつどのようにして生まれ、どのような過程を経て現代に生きる我々へと至るのか、という問いに対する現時点での総まとめ的な一冊。
付録の図表まで含めて400ページを超える論文で、読むのにかなりの時間と労力と手応えがありました。
枕元に置いて寝る前に読んでいたのだけれど、夢の中で手斧を持った現生人類に襲われたことが一度ならずあって命がけの読書だった・・・というのはウソです。
さて、人類はどのように歩んできたのか。
かつては各地域で個々に進化したとする他地域進化説とアフリカから全世界に広がったとするアフリカ起源説とがあったが、遺伝子学の発展によって、後者が定説となった。
そして今や、我々非アフリカ人はたった一組の男女にまで遡ることが出来る。母系はミトコンドリア、父系はY染色体が交配によっても変わることなくその特徴を残しているのだ。
400万年前にアウストラロピテクス・アナメンシスが二足歩行を開始し、いくつもの類人猿が登場しては消えて行き、250万年前、ついに我々の祖ホモ族がアフリカに登場。脳の容量が増え、道具を使うようになったホモ族は系統に分かれながらも地上を支配した。しかし氷河期によって絶滅の危機に瀕する。しかしなんとか生き残り17万年前、我々ホモ・サピエンスが登場。
アフリカで漁労採集生活を送りながら徐々に発展していった。
我々がアフリカを出発したのは諸説あるが、この本では七万年前以上(8万5千年前)という説を採っている。
数十名から数百名のこの一団は何か必要に駆られてアラビア半島の南側からアフリカを出発した。人類史上アフリカを旅立つことに成功したのはこの集団だけだった。ここから人類の長い長い旅が始まる。
勇敢な彼らだったが、しかし、数万年の旅の過程で最初の遺伝子は一組の男女を残して絶滅した。この集団のうち、現代まで生き残っているのは男性、女性たった一組の遺伝子だけしかない。
この一組の遺伝子が壮大な人類史の始まりだったというお話。
ぼんやりと知っていたが、こうして科学的な考察を含めて提示されるとその壮大さに身震いがします。
この一組の遺伝子はのちにインドで母系のミトコンドリアイブは二手に、父系のY染色体は三つに別れ、アジア、オセアニア、ヨーロッパへと分散していきます。
この系統図は図解で挿入され各人種がどこで別れて行ったのかも一目出来、その過程を遡っていく楽しみが味わえます。系統図に日本人を見つけたときにはやはり嬉しい。我々も長い旅をしてきたのだなぁという感慨は確かに沸いてきます。
一組の遺伝子から始まる人類の旅は長く、その別れた子孫たちはその地域毎の環境に合わせて変化していきます。アジア地域のモンゴロイド、西ヨーロッパのコーカソイド、アフリカ・東南アジアの一部のネグロイド、オセアニアのオーストラロイド。
この本では人種間に優劣は無いとしていますが、そこはまだ異説もあり研究過程の分野。人種によってその環境に適用するため優劣が生じたという説も強いようです。勿論、差はあっても、そこに差別を持ち込むべきではないと思いますが、差別を否定するために事実を見ないようにはしたくないところ。ナイーヴな問題が科学者達を囲んでいるようで、著者は敢えて優劣は無いと力説しています。
アフリカを出た我々の祖先がどのように別れどこに行ったのか、一組の遺伝子を持つ子孫がどのように変わって行ったのか、についてはまだ仮設と推論も多いようなのですが、大きな流れが具体的に描写されていて面白かった。しかし、読み辛さは確かにあるので理解が及んでいない面も多かったです。
このように、凄いボリュームで文字通り全史と言って良い内容なのですが、惜しいのは2003年に出版された本の翻訳というところですね。こういう研究分野はそれこそ日進月歩、次々と新しい発見がなされる分野だけに、すでに古くなってしまったり、新たな発見があった部分も多いと思われます。ぜひ最新の内容でのこういうまとめを読みたいですね。
事実がわかると、そこに物語を見出したくなります。
何故我々はアフリカを出て世界中を旅したのか、そして何故別れて行ったのか。そこにどんなドラマがあったのか。事実を知り、そこにある人間模様や物語を感じることが出来たときに、この本の序文が生きてきます。

自分がどこへ行くかを知るためには
自分が今いるところを知らなければならない。
そのためには、自分がどこから来たかをした無ければならない。
        フィリピンに残るオセアニアの古いことわざ

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