その日暮らしをする明治の職人は貧困層を形成した。現代はどうか。

数ヶ月間日雇いだけで生活していたことがある。

以前読んだ、「仕事と日本人」の明治の職人たちの姿を思い出しました。

仕事と日本人」武田 晴人 著(P115)
独り者の職人の生活は、だらしのないのが普通で、金はあまり稼げないのに、しばしばその稼ぎよりはるかに多くの金を酒や遊興につぎこみます。職人たちが仕事着のほかに晴れ着などをもっているのをみることはまずありません。新しい着物が必要となると、彼はいつも借金をしてつくり、その新調の衣服で用をすませて二、三日すると、売るか質に入れてしまいます。それも借金を返すためではなく、遊興に対するやみがたい渇望を満たすためなのです。この東京で人気のある料理店の経営者が、これについて興味深い話を聞かせてくれました。昨年11月中に彼の店にやってきた九〇〇〇人の客のうち、三五〇〇人が職人で、二三〇〇人は小商人や店員、一三〇〇人が小商人の妻子たちであったというのです。この月の売上高のうち、職人が四〇%を支払い、小商人や店員は二〇%を支払ったといいます。これは職人たちの稼いだ金の多くがどこに消えていくかを示しています。こんな無鉄砲な金の使い方はあまりにも愚かだと思われるかもしれないでしょうが、教育がない上に、求める娯楽は限られており、飲酒と遊興がもっとも手近な楽しみなのですから、彼らがその方に足を向けるのも当然です。

これは明治三十年(1897年)に日本の労働運動の草分けとして知られた高野房太郎が書いた「明治日本労働通信」の121ページの一節です。

この原因は主に江戸時代は職人として独立した地位にあった職人が工場や鉱山など、労働者となり、そして物価の上昇に対して賃金は上がらず、収入が低い中でも以前の働き方を変えられないことから起きた状況です。江戸時代の職人は庶民からの尊敬を集め、収入もそれなりにありました。「磨きをかけられた技能を頼りに、彼らは「仕事」を選び、その仕事によって得られた金銭に重きを置かなかったといわれています。」(「仕事と日本人」(P98)明治のこの頃は丁度格差が開き、旧職人層を中心とした貧困層が成立していました。

特徴としては上記の職人の姿と似ているのですが、リンク先の記事の日雇い層は必ずしも腕に覚えのあった人びとが時代の流れに取り残されて・・・というのとは違います。ただ「仕事によって得られた金銭に重きを置か」ず「遊興に対するやみがたい渇望を満たすため」に日々の生活を送っている姿が共通しています。そして、当時も今もそれに多くの人びとは彼らの姿に眉を顰めます。

これは労働観に対するギャップが原因なのではないでしょうか。現代では多くの仕事で標準化された仕事を時間内に過不足無くこなすことが求められます。労働とは与えられた職務をこなすことだという観念が広がると労働することには人は多くを求めないし、その時間は極力少なくしたいと思います。

仕事と日本人」武田 晴人 著(P243)
「賃金を得ることを目的として労働する」という観念が普遍的なものと受け止められるようになります。(中略)それは、何をしたかではなく、どれだけ稼いだかで人の価値を計るような社会になっている現代を象徴的に示すイデオロギーなのです。

つまり、労働に対する期待が賃金を得ることだと割り切っていれば、そこで得た賃金を、限られた娯楽に振り分けるようになるだけではないでしょうか。それに対して多くの人は、それは違うと漠然と思っているのだけどその違いを上手く言葉に出来ない。そのギャップによってうまれるもどかしさがのようなものが我々に漂っているように思います。働く意味の捉え方の違いが日雇いでもよしとする人びとと、そうでない人びととの違いで、その違いは労働の捉え方の違いに起因するが、その違いをまだ誰も明確に出来ない。しかし、その違いを曖昧にしたままだと社会に格差が広がっていくのだろうと思います。

このあたり僕自身曖昧な認識ので適切なことを言えないのですが、自律、自立的な働き方と賃金だけではない労働観が生み出されていかないと根本的な解決にはならないのかなと思います。そんな曖昧なことを言っているヒマがあれば現実的な施策の一つも考えるべきなのでしょうが、正直良くわからないという感想です。単純労働は必ず必要で、それに従事する人びとも必ず必要。どうしたもんだろうな。そういう日雇いの人びとの働き方は結局のところ社会に貧困層を生み出していくだけなのだけど、それは必要な層と考えるかどうかという問題ですね。そして出来れば格差はあるべきではないと思う。そこに無い知恵を絞らないといけないんだなぁと思うが、やっぱりよくわからない。うーーん。

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