ベルセルク 33巻&ヤングアニマル最新号読んだよ

以前も書いたのだけど(Kousyoublog | ベルセルク)、物語世界を一つの心的世界に見立てて意識と無意識のせめぎ合い、いわば「個性化の過程」を神話的物語としているところにこの漫画の魅力があると思うのですが、そのラインは特に大きく揺らぐことなく最新刊でも進んでいるなと思う。

大きな展開が無いようにも見える33巻ですが、それぞれの登場人物たち、特に主要な登場人物であるグリフィス、ガッツ、ガニシュカをベルセルクという作品の中の一つの意識の流れと考えるととてもわかりやすい。グリフィスという強い意志があり、今巻ではそれに対抗するためにガニシュカも様々なものを喪失し、喪失することで自我を強化して一つの強い意志としてグリフィスに対抗しようとしている。

このベルセルクという作品は非常にユング心理学的思想からの影響が強い、あるいは、かなりの親和性があるように見える(それは色々な人から指摘されているようだ)ので、ユング心理学的な世界観がスポッとはまってくる。

河合隼雄著「ユング心理学入門」(P223-224)
自己実現の過程における自我の役割の重要性について、ユングは「自我の一面性に対して、無意識は補償的な象徴を生じせしめ、両者間に橋渡しをしようとする。しかし、これはつねに、自我の積極的な協同体制をもってしなくては、起こりえないことに、注意せねばならない」と述べている。すなわち、まず、自我を相当に強化し、その強い自我が自ら門を無意識の世界に対して開き、自己との相互的な対決と協同を通じてこそ、自己実現の道を歩むことができるとするのである。

ユング心理学入門
ユング心理学入門
河合 隼雄

特にこの33巻では、グリフィスに恭順した人たちが口々に「新しい世界」とかを言い出す訳なのだけど、それはグリフィスという自我が、彼らベルセルク世界の無意識層によって強化されていく様子なのだろうと言える。

まるで自己実現をする過程(=個性化の過程)であるかのような痛みと変革へと至る過程の始まり、という巻である訳で、おそらく一定のところまでグリフィスという巨大な自我に基づいた世界の変質が描かれるのだろうが、それは長くは続かないのだろうという予兆もはらんでいる。それは、グリフィスもまた、ベルセルク世界では「自我の一面性」でしか無い訳で、そのグリフィス的”「新しい世界」へと誘う人智の及ばぬ自我の奔流”の後に再び、グリフィスによって抑圧されたもう一方の無意識的勢力がグリフィスと対峙していくのだろうなぁと思った。

バーキラカ一族の首領シラットがグリフィスの部下に仲間に誘われ、そこで断る際に発したこのセリフは多分大きな伏線になる一つ。

「人智が及ばぬものに委ねて良いのかとな」

彼らのような考え方はグリフィス的自我の正反対にあるのかな、と思う。多分、この作品では「誰かを無条件に信じたもの負け」みたいなところがあって、「グリフィス様」とか「新しい世界」とか「ガッツさん」とか言ってるの全部死亡フラグに見える(笑)そういう意味で最近出てきた航海王子ロデリックは絶対死にそうも無いな。

また、主人公のガッツだけど、彼もまた今後の伏線になるような悪夢を見ている。そのうちグリフィスと対峙することになるのだろうが、グリフィスがそうであったように、ガニシュカが今巻でそうであったように、ベルセルク的心的世界で一つの意志となるには強い自我が必要で、その過程で大きな喪失を彼は今後しなければならない、はず。その伏線があったので、誰が対象になるのかはさておき、あの大イベントがまたくるのかーとちょっとげんなりしつつもその回を楽しみに待っている(笑)まぁ、あるとすると前回のグリフィス的位置にガッツが置かれることにならざるを得ないよね。

ということで。。。続きは5年後ぐらいにまとめて読む。まぁ、今のペースだと5~6巻しか出てないだろうけど(笑)

蛇足
ベルセルク読んでると、直接の関係は無いが「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」思い出す。大枠のプロットがかなり近いと思うのだがどうかな。三浦 建太郎も一人で書いていると聞くけれど(そんなことはないらしいので訂正)、作品を作るアプローチの仕方が村上春樹ともしかしたら近いのではないだろうか。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈下〉 (新潮文庫)
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