直接民主制のために重要な職人精神(クラフトマンシップ)

「ネットがあれば政治家いらない」 東浩紀「SNS直接民主制」提案 : J-CASTニュース
「どの規模だったら直接民主制が可能かというのは、各時代のコミュニケーションの技術が決める。いま僕たちがいる時代は、劇的にコミュニケーションコストが安くなっている時代だから、10万人でも直接民主制ができるようになった。でも制度が追いついていないし、人の想像力が追いついていない。10万人で直接民主制なんてやったら大混乱が起きるだろうと人は思ってしまう。けれども僕は、想像力が追いついていないだけだと思う」

英国ブレア政権のブレーンだった社会学者のリチャード・セネットがその著書「不安な経済/漂流する個人」でこう書いていたのを思い出しました。

不安な経済/漂流する個人―新しい資本主義の労働・消費文化」(P172)
使い勝手のよさ(ユーザー・フレンドリー)は民主主義を駄目にするといっても過言ではない。自分のまわりの世界がどのように機能しているかを市民がすすんで発見しようと努力することこそ、民主主義には不可欠なのだ。

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4 不安は同時に可能性でもある
5 希望の星を望む

どういうことかというと、現代社会においては我々は消費者として使い勝手の良い物を購入しますが、その物がどのような材料で、どこで誰の手によって作られどのようなルートで手元に届き、どのような機能が何の目的で~といった細かいことまで探求していくことは、よほどの興味が無いとなかなかしないでしょう。また、日常の仕事も、頻繁に入れ替わっていく同僚たちと協調しつつその都度発生する課題に柔軟に対処していくスキルが重要視されていくため、じっくりと腰をすえて深く探求していく、というワークスタイルは一部の人たちを除いてはなかなか困難なものとなっています。
そのような社会状況の中で、政治も二大政党制によって政治のプラットフォーム化が起こり、二大政党間で政策の大きな差異が無くなることで、細か差異ばかり強調し、「使い勝手のよさ」でその本質を覆い隠すようになる政治の傾向を危惧して上記の様に述べていました。
民主主義下の市民は、「自分のまわりの世界がどのように機能しているかを市民がすすんで発見しようと努力すること」が重要で、それは日常の消費生活とは大きく離れて、何故だろう?どうなっているんだろう?という疑問と探求心が重要な職人精神(クラフトマンシップ)とでも呼ぶような態度が求められるということだとセネットは言います。

不安な経済/漂流する個人―新しい資本主義の労働・消費文化」(P198)
何も手に入らずとも、何ごとかを正しくおこなうことが真の職人精神なのである。私欲を超えたこうしたコミットメントほど ──私はそう信じるのだが──人々を感情的に高揚させるものはない。それがなければ、人間は生存するための闘争だけに終始することになるだろう

直接民主制を行うに足るWEB上のコミュニケーションプラットフォームはすでに充分に存在するのだろうと思います。あとは、政治に対してどれほどクラフトマンシップ、つまり「何も手に入らずとも、何ごとかを正しくおこなう」ために探求し続ける精神を持てるか?ということなのでしょうね。
おそらく我々のワークスタイルを、より自律的、能動的、主体的な職人型に近づけていき、また何事かを深く探求できるだけの時間的余裕を取れるようなライフスタイルへと変化させていく必要があるのでしょう。
どのようにして仕事を自分の仕事とできるか、政治への関心もまた自分の人生のテーマの一つとして喚起できるか、がキーだと思います。しかし、一定の経済効率性とトレードオフになるため、この不況下においては、困難な問題でもあります。
現在の状況下で社会全体としてそっちに一気に進むというのは考えにくいので、何はさておき、自分で食っていけるように何でもチャレンジしつつ、何でもいいから深く探求していく時間を自分で作ろう。そして何らかのかたちで情報発信し、そして緩やかに他者と繋がっていくように心がけよう。という超卑近で尻すぼみな結論でおしまい。しかし個人的にはそれこそ最重要で、最終的には大きな変化に繋がると思っているんですけどね。
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