三歩進んで大統領になったビル・クリントン

1992年に行われたジョージ・H・W・ブッシュとビル・クリントンの大統領選挙について面白いエピソードを見かけたので紹介します。

(中岡望著「アメリカ保守革命 (中公新書ラクレ)」P147)
一〇月一五日、バージニア州リチモンドでブッシュ大統領とクリントン候補の公開討論会が行われた。そのときの様子をジャーナリストのジョー・クラインは次のように伝えている。黒人の女性が質問に立ち、「失業で苦しんでいる人びとをどうするのか」と二人の候補に聞いた。ブッシュは官僚的な答えに終始する。だがクリントンはその黒人女性に向かって三歩ほど歩みより、「もう一度、不況があなたにどんな影響を与えているのか話してくれませんか」と語りかける。そしてクラインは次のように書いている。「これで大統領選挙は事実上終わった」と。クリントンの聴衆を魅了する演説と優れたボディー・ランゲージが、ブッシュを圧倒したのである。

三歩進めるかどうか、が明暗を分けたというお話だが、もちろんブッシュ・シニアが破れクリントンが勝ったこの大統領選挙には様々な要因がある。
当時レーガンから続く共和党政権はネオコンや保守派の大きな支持を受けていたが、ブッシュは彼らから距離を置き、リベラル寄りと言っていいほどの中道保守的政権運営をしたことで支持層が分裂していたこと、小さな政府志向が強まる中でその反対の「福祉国家政策」に重点をおいたこと、90~91年の景気後退で失業者が増大していたこと、就任時の公約を破り増税に踏み切ったこと、湾岸戦争でさしたる成果が残せなかったことなど様々なマイナス要因をはらんでいたのに対して、クリントンは従来の「大きな政府」的な古い民主党(オールド・リベラル)の主張から距離を置き「個人の責任」や「財政規律」「福祉の削減と小さな政府」「コミュニティの重要性」などといった従来の民主党と正反対の共和党的な「ニューデモクラット(新しい民主党)」の主張を繰り広げて、リベラルに振れるブッシュが取りこぼした保守派層を取り込み、持ち前の演説の上手さとブッシュにはない若さを全面に押し出していた。
保守主義がアメリカを覆い、順当に行けば世論は共和党有利という中、卓越した戦略でまさかの支持層逆転現象を巻き起こし、勢力はほぼ拮抗あるいはクリントンが圧倒し始めていたという時に、一気に流れを引き寄せたのが、この「三歩進む」というパフォーマンスだった。
「三歩進む」という小さな、しかしとても重要なこのパフォーマンスにビル・クリントンの非凡さを感じさせられます。まぁ、見習おうと思って見習えるもんじゃないんですが、人との向き合い方一つで大きく流れを変えることが出来ると言うお話として、参考にしたいですね。
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