自分の思考フレームをはずす、という傾聴法

たまーに会うお義母さんの話を上手に聞く方法 – kobeniの日記
このkobeniさんの記事にまとめられたお義母様との対話の実践は、思考フレームをはずす、というとても高度な傾聴法の一つのように思いました。
対話で心をケアするスペシャリスト《精神対話士》の 人の話を「聴く」技術」によると、我々の日常会話は二つの情報から成り立っているそうです。一つは発された言葉そのものが意味する「意味情報」、もうひとつはその言葉に込められた感情を意味する「感情情報」です。コミュニケーション能力とは「意味情報」と「感情情報」の二つを過不足無く受け止め、会話する能力であり、「話し手はメッセージを発するとき、じつは、そのメッセージの裏側に隠れた感情こそ伝えたいと思っているのです。
その傾聴法の一つとして、自分の思考フレームをはずすというメソッドがあります。

対話で心をケアするスペシャリスト《精神対話士》の 人の話を「聴く」技術
人はそれぞれ自分の思考の枠組み(フレーム)のようなものを持っています。(中略)育った環境や教育、親のしつけ、性別などを通して、人は物事を考える枠組みのような思考パターンを作っていきます。
そのフレームに収まらないことを見聞きすると、人は「でも」とか「しかし」とか「そうではなくて」などと、反論したくなったり、相手の考えを修正したいという衝動を覚えるものです。
この思考フレームが話し手との間に壁を作ります。自分の思考フレームに相手を勝手に当てはめ、「この人はお金持ちだ」「この人は病気だ」「この人は反社会的な考えを持っている」「この人は暴力的だ」などと決め付けてしまうと、他人との深いコミュニケーションをとることが不可能になります。
(中略)
自分の思考フレームをはずして、先入観のない目で、相手の心を見てみましょう。「でも」「しかし」と言いたくなったら、その言葉を一度飲み込んで、とりあえずあいての話に傾聴してみてください。

「■お義母さんの話は、ストックではなく常にフローであると心得る」「■登場人物や地名が分からなくても、気にしない」といった姿勢はまさにこの思考フレームをはずす、という方法の具体的な実践だなぁと思いました。
同書では、この方法の実践例としてかなりシビアな例が紹介されています。
A君は温和な少年だったが、学校でいじめにあい、学校にいかねばと自身では思いながらも葛藤してひきこもってしまう。しかし両親は学校に行けと説教してくる。そこで堪り兼ねて親に暴力を振るってしまい、警察へ。保護観察となり精神科医にもかかるものの少年の孤独感は強まる一方で、心を開こうとしない、という状況でベテランの精神対話士が派遣されてくるというシチュエーションです。

対話で心をケアするスペシャリスト《精神対話士》の 人の話を「聴く」技術」より
最初に会ったとき、彼の目は怒りに燃えていました。不信感のかたまりを身体全体で表現し、精神対話士をにらみつけ、宣戦布告をするようにこう言いました。
「俺は自殺をするつもりなんですよ。でも、一人で死にたくないからね。もう一人道連れにします。誰だと思いますか。父親ですよ」
(中略)
そして精神対話士にも、
「人を殺して、なぜいけないのか」
と尋ねてきました。
精神対話士はこう答えました。
「君が殺したいと思うのだったらそれは君の意思だから、本当に殺すか殺さないかということは別として、その気持ちはぜひ汲んであげたいと思う。できれば、どうしてそう思うようになったのか教えてほしい。やっぱりそれだけのつらさや苦しい気持ちがあったんだと思う。その気持ちを話してほしいし・・・・・・それにしても、私は君が実際に父親を殺すとは思えない。殺せば周りの人が苦しんだり悲しんだりすることを君はちゃんとわかっていると思うんだけど・・・・・・たぶん、君が殺したいというのは、自分がそれぐらい苦しめられている気持ちの表れのような気がするんだけど・・・・・・どうなのかな」
彼はしばらく黙ってから遠くを見つめ、涙をポロッと流しました。

その後、彼は対話を重ねるごとに家庭内暴力も減っていき、社会復帰へと進んで行ったとのことです。
書籍用にかなり脚色が入っているだろうし、おそらくここまで至るのに一朝一夕ではなかっただろうとは思うものの、「殺したい」という”反社会的な”思考を受け止めて、相手を尊重する姿勢に学ぶところは大きいと思います。
少しそれますが、「殺したい」「死にたい」と人が言うときの臨床家の姿勢について、河合隼雄氏が「こころの処方箋 (新潮文庫)」で以下のように書いています。

河合隼雄「こころの処方箋 (新潮文庫)」より
抑うつ症で死にたいと言う人は多い。それに、実際に自殺することも多いので、気をつけねばならない。
しかし、ここで大切なことは、この人の自殺をとめることにばかり熱心になると、それは、この人の「死んで生まれ変わろう」とするせっかくの動きをとめてしまうことになる、ということである。従って、われわれとしては、自殺を単純にとめるというのではなく、それを象徴的な「死と再生」への過程としてすすめてゆくことを――実際の自殺を避けつつ――援助することを考えねばならない。

そこで、話を聴き、相手がリアルな死を選ぶのを避けつつ、その死にたい、殺したいという思いの背後にある感情を汲み取り、「死と再生」へと向かわせるよう手助けをするのだそうだ。ただ、ちょっとどの本で読んだのか忘れたのだけれど、やはり河合先生のだったと思うが、ある臨床家が「死にたい」という患者の話を、型通りの方法で話を聴いていて、ある日本当に死んでしまい、聞き手であった療法家自身も大変心に傷を負ったという話がありました。
上記の例は単純化されているが、ケースとしてはとてもシビアで型通りの方法で対処するのはとても危険だろうということは申し添えておかなければならないでしょうね。上記の方法ですべてうまくいくのではなく、常にケースバイケース、百人百様の、特に困難な例であり、あくまで、その思考フレームを外す、という一例として読む方が良いと思います。
で、思考フレームをはずす、という話に戻って、このように思考フレームをはずす、という方法はいわばコミュニケーションや傾聴の専門家の間での高度な技術ですが、日常生活でもそのメソッドは確かに有効なのだと思います。いかにして、自身の思考フレームをはずせるか、というのは自身が何に執着し、何によって呪縛されているのか?ということに向かい合うことにもつながってくるわけで、そのプロセスをごくごく自然な振る舞いとして、しなやかに行える人というのはとても尊敬します。
このように、思考フレームをはずす、ということを実践することで、自身について見えてくるものもあるだろうと思いますので、人の話を聴くときに、「でも」「しかし」という言葉を飲み込んで相手の話を受け止めてみると良いのではないかと思います。まぁ、理解していても結構難しいもので、僕はそれがなかなか苦手なゆえに非コミュなんですけれどね(笑)

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