必要を根拠とすることのできないものはより美しくなければならない

見田宗介「現代社会の理論」(P36)
必要を根拠とすることのできないものはより美しくなければならない。効用を根拠とすることのできないものはより魅惑的でなければならない。

資本主義体制は第二次世界大戦以降急成長、急拡大を遂げた。その持続する繁栄を保証してきたのは「管理化」と「消費化」という二つの方向が互換し、相補しあったことにあると、見田は言う。
ケインズは国家の市場への積極的な介入によって資本の成長にとって必要な需要を作り出し続けることで市場を拡大させた。このケインズ政策はケネディ・ジョンソン政権で最盛期となり、共和党のニクソンも小さな政府を掲げつつも事実上ケインズ的政策運営を行い、レーガンも同じく小さな政府を標榜しつつも結果として軍事費を中心に戦後最大の支出を行うなど、結果としてケインズ政策的な管理化された資本主義は20世紀を通して徹底され、それはアメリカだけに留まらず欧州や日本など資本主義勢力に共通する政策であった。
このような「管理化された資本主義」と互換的に、相補的に、あるいはその影響によって「情報/消費社会化」が徹底されていく。消費社会のダイナミズムを保証するのは自然の必要や文化から欲望が自由になること、つまり「欲望を限定し固定化する力からの自由」である。労働力の伝統的共同体からの解放と市場化が資本制システムの存立の前提であったように、伝統的共同体による欲望の限定と固定性からの解放と市場関係を通してしか自己を充足することの出来ない欲望の主体の大量創出が消費社会を形成した。

見田宗介「現代社会の理論」(P30-31)
古典的な資本制システムの矛盾――需要の有限性と供給能力の無限拡大する運動との間の矛盾、これが「恐慌」という形で顕在化することによって、「資本主義の矛盾」の典型的な説明として語られてきた――この基本矛盾を、資本のシステム自体による需要の無限の自己創出という仕方で解決し、のりこえてしまう形式が、<情報化/消費化社会>にほかならなかった。
このようにして<情報化/消費化社会>は、初めて自己を完成した資本制システムである。自己の運動の自由を保証する空間としての市場自体を、自ら創出する資本主義。人間たちの欲望をつくりだす資本のシステム。資本制システムはここに初めて、人間たちの自然の必要と共同体たちの文化の欲望の有限性という、システムにとって外部の前提への依存から脱出し、前提を自ら創出する「自己準拠的」なシステム、自立するシステムとして完成する。
<情報化/消費化社会>は、誤解されているように、「純粋な資本主義」からの逸脱とか変容ではなく、<情報化/消費化社会>こそが初めての純粋な資本主義である。

見田の言う「純粋な資本主義」としての<情報化/消費化社会>はつまりケインズ革命の徹底された一つの姿であり、そのような<情報化/消費化社会>において需要を創りだす鉄則が冒頭に紹介した「必要を根拠とすることのできないものはより美しくなければならない。効用を根拠とすることのできないものはより魅惑的でなければならない。」という文に集約される。
この鉄則ゆえに車は毎年のようにモデルチェンジを繰り返し、衣服は毎年流行りのファッションが登場する。そして、上記の鉄則は必要や効用を根拠とするものも呪縛する。つまり、「必要を根拠とするものは、その中でも最も美しくなければならない。効用を根拠とするものは、その中でも最も魅惑的でなければならない」ほどに欲望を増幅しようとするようになってきているのではないだろうか。
しかし、完成されたシステムであるがゆえに、<情報化/消費化社会>は行き詰まりをみせつつあるように思う。おそらく上記の人の欲望を創出する鉄則は大きく揺らぐことはないだろうが、これからの数十年、「新しい資本主義の矛盾」と向きあうことになったとき、このシステムがどのような変容を遂げていくのか、それは誰にもわからないだろうが、その方向性を考察することはこれから重要になっていくだろう。
漠然とした内容だが、今後、掘り下げられるよう少し勉強したいと思っているという、現時点での備忘録として。

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