「自由な社会」を構想するための4つの社会モデルと2つの方法

見田宗介「社会学入門」によると「社会」を存立させる四つの類型があるという。

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まず縦軸に個々人の自由な意思によって主体的に形成されるか、個々人の意思とは関わりなしに客観的に存立されているかという違い、横軸に個々人の「人格的」な関係(=共同態的(ゲマインシャフト))か、特定の利害関係等々に限定された「非人格的」な関係(=社会態的(ゲゼルシャフト))かという違いの組み合わせによって四つの「個々人の行為が「社会」を形成する仕方の類型」が導きだされる。

1)共同体
伝統的な家族共同体、氏族共同体、村落共同体のように、個々人がその自由な選択意思による以前に、「宿命的」な存在として、全人格的に結ばれ合っている、というかたちで存立する社会。
2)集列体
市場における個々人の「私的」な利害の追求にもとづく行為の競合が、どの当事者の意思からも独立した、客観的な「市場法則」(価格変動、景気変動等々)を貫徹せしめてしまうという場合のように、個々人の自由な選択意思がたがいにせめぎ合い干渉し合うことの帰結として、どの当事者にとっても疎遠な、(「物象化」された)「社会法則」を、客観的=対象的objectiveに、存立せしめてしまう、という仕方で存立する社会。
3)連合体
「会社」とか「協会」とか「団体」等々のように、個々人がたがいに自由な意思によって、けれども「愛」による場合のように人格的personalな結合ではなく、特定の、限定された利害や関心の共通性、相補性等々によって結ばれた社会。「契約」や「規約」による「ルール」の設定とその順守ということが、「連合体」としての社会の、典型的な、よく発達した、存立の形式である。
4)交響体
さまざまな形の「コミューン的」な関係性のように、個々人がその自由な意思において、人格的personalに呼応し合うという仕方で存立する社会。

これら四つの類型はそれぞれが対立し合う関係ではなく相補的なもので、原始社会でも単純な共同体ではなく<諸共同体・の・集列体>を基本としつつ諸共同体間や内部に意思的な関係の萌芽があったと考えられている。また見田によると「近代、現代社会は、<諸連合体・の・集列体>という構造を骨格としつつ、即自的、および対自的な種々の共同態を内包し、またたえずあたらしく形成しつつある。」という。

見田は「社会学入門」で補論として、この類型論をベースにしつつ「自由な社会」について構想をしている。

自由な社会=『「それぞれの主体にとって<至高なもの>」を、相互に解き放つような社会の形式』をいかにして構想するか。

社会の理想的なあり方を構想する方法としては以下の二つの発想の形式がある。

1)歓びと感動に充ちた生のあり方、関係のあり方を追求し、現実の内に実現することをめざすもの。関係の積極的な実質を創出する課題であり、ある種の歓びに充ちた多彩なユートピアを構想する。

2)人間が相互に他者として生きるということの現実から来る不幸や抑圧を、最小のものに止めるルールを明確化していこうとするもの。関係の消極的な形式を設定する課題であり、構想されるユートピアたちが、それを望まない人たちにまで強いられる抑圧に転化することを予防するルールのシステムを設計する。

この二つの社会構想の課題は対立する形式のようにとらえられがちだが、人間にとって他者の存在が持つ、生きる意味と歓びの源泉としての他者と生きることの相互の制約と困難の源泉としての他者という両義性によって生まれた二重性であり、どちらが欠けても不完全になる相補的な発想の形式である。

上記の図のように、旧来の共同態(ゲマインシャフト)から社会態(ゲゼルシャフト)へというモデルではなくそれを横軸にして、意思的か意思以前的かという自由の獲得の度合いを縦軸にすることで、<共同体・の・集列体>から<交響体・の・連合体>への移行という社会構想をいかに実現していくか。当然ながら完全な交響体も完全な連合体もありえない。どこか意思以前的な共同体的、集列体的要因に引きずられる。そのために上記の二つの課題をいかに解決していくかが自由な社会を作るモデルになる。

というのが見田宗介の交響体の理論の基礎的な内容(以上、「社会学入門」P16-22、P165-201より引用、改変、要約)でした。これらを元に見田は「交響するコミューンの自由な連合」という構想を描いていくが、残念ながら僕には現実離れしたものに見えたので、そこには踏み入らないようにする。だが、この四つのモデルと二つの発想の形式は非常に有用で、特に今後『「それぞれの主体にとって<至高なもの>」を、相互に解き放つような社会』=「自由な社会」をいかにして構想していくかというアプローチの基礎として位置づけられると思う。

特に社会の構想は自由主義を前提とした議論であることが大原則で、アメリカ現代思想のリベラル・リバタリアニズム・コミュニタリアニズム・コンサバティズムの議論も、自由主義を絶対的なベースにし、いかにして「自由な社会」を形成するか、その自由はどこまで可能かという方法論・本質論的な対立だろう。それはコンサバティズムも同様で新保守主義(ネオコン)にしても、保守本流のラッセル・カークらの伝統主義にしても自由主義が根本にある。

これに対して日本の場合は保守主義はどうしても明治擬古のナショナリズムに接続してしまいがちだ。それはいわば意思以前的な、一定の均一性の元にある日本人という想像の共同体を前提として、内と外に峻別し、多様性よりも宿命的な同一性が重視され、異質な者の排除に走りがちになる。

いかにして、均一でない日本、多様性があり、自由主義的思想と一定の繋がりを見いだせるような、「日本的なるもの」ではない、もうひとつの歴史、伝統の発見が出来るかが、ますます強まるであろう保守的傾向の受け皿として重要なのではないかと思う。まぁ、恣意的にせず、普通に地道で実証的な歴史研究が進められていけば自ずと均一でない多様な姿が浮かび上がってくるものだと思うけれども。それはマルクス史観的なものにも言えると思うのだけど、そこまで手を広げると収集がつかなくなること請け合いで大変そうなのでとりあえずスルーしておく。
「新しい公共」の議論やサンデルブームなどによる公共哲学への注目は、今後どのような展開を見せていくのか、自由主義をベースとした日本における社会構想の哲学は果たして根付いて発展していくことができるのか、僕も少しづつ出来る範囲で勉強しながら注視していきたいと思います。まぁ、偉そうなことが書けるわけではなく、このあたりは注目し始めた程度なのでこれから頑張ります。ということで、四つの社会モデルと、社会構想のための二つの発想形式の簡単なまとめでした。

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