災害・避難情報の迅速な通知に活躍する携帯エリアメール

先日書いた記事『「津波災害――減災社会を築く」河田惠昭 著』で挙げたように、災害情報の伝達にはその迅速性にどうしても限界があるが、ソフト面で近年効果を発揮しているのが携帯電話の緊急地震速報(エリアメール)であるという。

河田惠昭 著「津波災害――減災社会を築く (岩波新書)」P124
エリアメールとは、地域内の全携帯電話に一斉通報を行う仕組みであり、輻輳する心配がなく、短時間で一斉に配信することが可能である。その利点は、つぎのようである。
(1)地域住民に加えて、観光客や自動車による移動者にも配信が可能
(2)即時かつ同時に避難勧告や指示の配信が可能
(3)事前登録が不要でアドレス管理も不要
(4)ポップアップ画面が現れ、専用の着信音とバイブレーションで通知
一方、短所としては、以下のことが指摘されている。
(1)現在、NTTドコモだけがサービスを提供し、新しい端末のみ受信可能
(2)電源オフや圏外のときは受信不可
(3)通話中やiモードでメール通信中は受信不可
現在、四二自治体で導入しているが、二〇一〇年のチリ沖地震津波の際にはその有効性が立証された。たとえば、奄美大島の宇検村(九四二世帯、二〇四八人)では、五回のメール配信が行われ、認知率は八〇パーセントと高く、六〇パーセント以上がすぐに覚知している。また、メールを転送している人も多いことがわかった。とくに内湾の船上への伝達も行われており、将来、出漁中の漁船への伝達も視野に入れた対応が可能となるだろう。

同書では対応しているのはNTTドコモだけ、とのことだったが調べてみると、ドコモは緊急地震速報と災害避難情報を、AU、ソフトバンクとも2009~2010年にかけて緊急地震速報のみサービス提供を開始していることがわかった。ただし、ソフトバンクは対応機種が2011年3月時点で831Nの一機種のみであり、実質対応しているのはドコモ、AUともそれぞれ約100機種程度づつということのようだ。

緊急速報「エリアメール」とは | サービス・機能 | NTTドコモ
緊急地震速報 | EZweb | au by KDDI
・緊急地震速報 | ソフトバンクモバイル

ドコモHP「緊急速報「エリアメール」の仕組み」より

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ドコモHP「緊急地震速報について」より
緊急地震速報は、震源近くで地震(P波、初期微動)をキャッチし、位置、規模、想定される揺れの強さを自動計算し、地震による強い揺れ(S波、主要動)が始まる数秒~数十秒前に素早くお知らせするものです。
ドコモでは、気象庁から配信された 「一般向け緊急地震速報」を利用して最大震度5弱以上と推定した地震の際に、強い揺れ(震度4以上)の地域(全国を約200の地域に区分)の携帯電話に一斉配信いたします。

とのことで、地震到達以前またはほぼ時を同じくして通知が来る。またドコモの災害避難情報は上記のとおり一部地方自治体で災害発生時の避難情報を当該地域の対応機種に一斉通知するもので、東京都の場合渋谷区、足立区、江戸川区、三鷹市、昭島市、狛江市が対応(2011年3月現在)している。

これら緊急地震速報、災害避難情報通知機能はすでに過去の災害で効果が実証済みということもあり、一層の地域拡大、機種対応が求められる。特に対応が一機種のみのソフトバンクは力を入れてほしいところだ。

このエリアメールは前回の記事に書いたように、減災社会を構想する上で重要な要素となる、個々が自分で判断して避難行動を取る「自助」による「生存避難」を援助し、また自治体の負担を軽減することにもつながる効果がある。そして、このエリアメールを含めた、「自治体の負担を軽減しながら、複数の媒体で、防災情報を住民に伝える仕組み」の構築が今後災害対策として最重要な課題であると同書で指摘されている。

このような「自治体の負担を軽減しながら、複数の媒体で、防災情報を住民に伝える仕組み」は総務省で「安心・安全公共コモンズ」と名づけられ、構築の必要性が重視されている。

総務省資料より
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今回の震災ではtwitterやustreamなどが情報伝達に一定の効果をもたらしたが、さらに複数の媒体での情報伝達の仕組みを整え、確実かつ迅速に対象者に通知し、避難行動がとれる状態を構築する必要があるだろう。

そこで、このエリアメールに関連して、一つ思いついたのだが、例えばmixi、gree、モバゲーといった数千万人規模の会員数を誇る携帯プラットフォーム事業者やtwitter、facebookなども、もし可能であれば緊急地震速報・災害避難情報通知のシステムを整えることを検討してみてはどうだろうか。気象庁・地方自治体から直で各事業者を通じて一斉通知出来れば、上記で挙げられたエリアメールの弱点である、(1)の機種に依存する点と(3)の通話中やiモードでメール通信中は受信不可という点を、それぞれのサービス上のダイレクトメールで通知することでカバー出来、より幅広い人々の災害避難対応に繋がるだろう。特に今後の減災社会を構想する際に自助とともに産助(一般企業による災害対策支援)が重要であると同書では指摘されているが、まさにその実践として有効ではないだろうか。

こういった災害情報の迅速性は今後ますます重要な課題となり、それを受け取る一人一人がその情報をいかに避難活動に結び付けていくか、また政府・地方自治体や地域などといかに協力して災害対応を進めていくかが、これからの減災社会に向けた取組みとして重要であると思う。

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