ビン・ラーディンについて書くために読んだイスラム関連本10冊まとめ

先日ウサマ・ビン・ラーディンの生涯について、長すぎて誰も読みたくない嫌がらせかレベルのボリュームで書きまいましたが、ほんとすいません。何故ブログを書き始めると長くなるのか、自分でも未だに謎です。
・第一部「はぁいそれじゃ自己紹介いってみよう」 「あ、あの、ウ、ウサマ…ビン・ラーディンです…その、ええと…どうか、よろしく、お願いします…」
・第二部「誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない、アラブ世界って、そういう仕組みだったんだね・・・」
・第三部「アラブの人々の祈りを、絶望で終わらせたりしない」
さて、せっかくですのでこれらの記事を書く上で参考にした本のうち、中東関係の本について簡単に紹介します。全10冊。どれもとても勉強になりましたのでおすすめです。

新版 オサマ・ビンラディンの生涯と聖戦 (朝日選書)
保坂修司
朝日新聞出版
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ウサマ・ビン・ラーディンの誕生から九・一一後までの旧版に、あらたに二〇一一年五月二日の死と、それまでに判明した様々なことをまとめた最終章を加えた新版。とくにウサマの発言を多く収録しており、彼の思考を辿るのに有用だった。ビン・ラーディン解説書の多くがウサマの思想についてあまり多くを割かず、テロ等事件を中心に描くのに対して、彼の二項対立的な思想やその影響なども論じられていて興味深かった。

アルカイダ
ジェイソン バーク
講談社
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英国の「ロンドン・オブザーバー」誌チーフリポーターのジェイソン・バーク氏によるアルカイダとビンラーディン及びその周辺の人々や国際情勢などをまとめた置き場に困るレベルの厚みの大著。特にテロに及ぶ実行犯たちの背景などまで描かれており、実力派ジャーナリストとしての力を存分に発揮していると思う。特に僕も共感するのは、著者のまとめの一文、

イスラムであろうとその他であろうと、すべてのテロリストの暴力は正当化できない、許すことができない、卑劣なものである。しかし、わたしたちが非難することは、理解する努力をしてはならない、ということを意味しない。わたしたちは、「なぜ?」を尋ねつづけなければならないのだ。(P434)

そう。なぜ?を問い続け調べた結果、テロリストたちによる許すべからざる暴力に及ぶ背景の多くが、誰かのためになりたいという利他的な思いや、ささやかな希望だったことを知ってしまう。そんな時、僕はどんな顔をすればいいのかまだわからない。

イスラーム戦争の時代―暴力の連鎖をどう解くか (NHKブックス)
内藤 正典
日本放送出版協会
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世界中で繰り広げられる対イスラーム世界およびイスラーム世界内の対立の複合的な構造をシンプルに解きほぐしつつ、その和解への道筋を模索する一冊。特にサミュエル・ハンチントンらの西欧とイスラムとが相容れないとする「文明の衝突論」に対する徹底的な批判を前提としている、という点で常識的な良書ということは伝わるんではないでしょうか。また、イギリス、フランス、オランダなどのイスラム差別・排除の現状と多文化政策が行き詰まった要因なども詳述されており、とても勉強になりました。この本についてはまた改めて。

中東 迷走の百年史 (新潮新書)
宮田 律
新潮社
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イスラム関係の新書をたくさん出している宮田律先生の、イスラム諸国史概説新書。取り上げられているのはイラク、イスラエルとパレスチナ、サウジアラビアとイエメン、イラン、トルコ、クルド、アフガニスタン、カシミール、中央アジア、カフカス、東アフリカ、マグレブ三国など幅広く、中東地域について大掴みに把握するなら、使えると思います。ただ、これで留めずそれぞれ各国史を他であたるのがいいかなとも。ここ百年の中東史を理解する上での要点として以下の五点が挙げられている。
1)欧州列強の帝国主義がもたらした人為的な国家
2)東西冷戦が持ち込んだ対立の火種
3)石油の産出、貧富の差の拡大
4)世直しの論理としてのイスラム原理主義
5)民主主義が混迷を招くという逆説

アフガニスタン―戦乱の現代史 (岩波新書)
渡辺 光一
岩波書店
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新書なのにすごい充実度で惚れ惚れする一冊。十九世紀初頭から現代までのアフガニスタン現代史はわれわれ素人なら最低限これで問題無いいレベルなんじゃないかと思う。より深くコミットするなら関連書もたくさん出ているので掘り下げていけばいいと思うけども。前回の三つのエントリーもほぼアフガニスタン部分はこれに基本的に準じている。その文化や自然、歴史から、将来の展望などまできちんと書かれていて良質です。

パレスチナ新版 (岩波新書)
広河 隆一
岩波書店
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パレスチナ問題の超ロングセラー入門書の新版。西欧列強の侵略や欧米でのユダヤ人差別がやがてユダヤ人国家の建設へと彼らを追い詰め、その結果イスラエルによるパレスチナ人に対する殺戮と虐殺、民族浄化という悲劇へと繋がり、それが中東に打ち込まれた楔となっていくその過程が詳細かとわかりやすく記されている。イギリスの三枚舌外交とかまじありえないんですけどー的な。ちなみに、実は前のシリーズにはこの本などを参考にしつつ二話と三話の間に「それなら、見せてあげようか――列強とアラブが、共に歩んできた歴史を」というまどマギ11話的タイトルで帝国主義の勃興からアラブ世界侵略、それに対抗するかたちでのアラブの世俗政権の誕生や、西欧によるユダヤ差別からパレスチナ問題あたりの通史を入れる予定だったんですが、さすがに本筋から逸れ過ぎる&長すぎるのでばっさりカットしていたのでした。そのうち編集したり、切り貼りしたりしててなんらか記事にするかもしれませんがまぁネタ的にハードル高すぎるのでお蔵入り濃厚です。

イスラム過激原理主義―なぜテロに走るのか (中公新書)
藤原 和彦
中央公論新社
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エジプト現代史を中心に戦闘的イスラーム主義(サラフィー主義)組織の誕生とその動向を描いた本。特にサイード・クトゥブの思想や、エジプトの世俗政権とイスラム勢力の対立構造などを把握するのにいいと思います。発売が二〇〇一年一〇月なので、九・一一にはあとがきで簡単に触れられているだけ。九〇年代以前の状況を把握できるだろうと思う。ところで、イスラーム主義と呼ぶか、原理主義と呼ぶかでは大きく論が分かれているが、概ねイスラームの場合は原理主義と呼ぶべきではないというのが近年では主流ではないかと思う。(原理主義についてはこっちに簡単に→「原理主義のイデオロギー・組織に関する9つの特徴」)この本と上記の宮田著などもそうだが、イスラム原理主義という言葉が使われている本は概ね彼らに厳しいスタンスが多い。

テロの経済学
テロの経済学
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アラン・B・クルーガー
東洋経済新報社
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アメリカの労働経済学者によるテロリズム研究書。ふんだんに統計調査を駆使して、実証データからあきらかになるテロリズムに関する事実がまとめられる。結構数式や統計グラフなども多く使われているので、少しハードルが高いかも。僕も良く理解してないところ多いです。ただ、この本から導き出される「テロは、犯罪行動よりもむしろ投票行動に似ている。」「高い教育レベルにある人や高所得の人の方がテロリズムを支持する傾向がある」「貧困はテロの直接の原因ではない」などはもっと広く知られるべき。この本についてもまた改めて他のテロリズム関連書籍と一緒に紹介する予定。

イスラーム文化?その根柢にあるもの (岩波文庫)
井筒 俊彦
岩波書店
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イスラム思想について学ぶための名著にして定番にして超ロングセラーの一冊。読んだときはいろいろ目から鱗で感動した。

P18-19
イスラームとはいったい何なのか、イスラーム教徒(ムスリム)と呼ばれる人たちは何をどう考えているのか、彼らはどういう状況で、何にどう反応するのか、イスラームという文化はいったいどんな本質構造をもっているのか、――それをわれわれは的確に把えなければならない。それがはっきり主体的に呑みこめないかぎり、イスラームを含む多元的国際社会なるものを、具体的な形で構想したり、云々したりすることはできないからであります。イスラームという宗教の性格、イスラームという文化の機構が根源的な形で把握されてはじめて、イスラームはわれわれ日本人の複数座標軸的な世界意識の構成要素としてわれわれのうちに創造的に機能することができるようになるでありましょう。

まだまだイスラムについては腑に落ちてこないので、より精進したいです。あ、この本ではよくある俗論を「イスラーム教は砂漠の宗教ではない」と気持ちいいぐらいに一刀両断しているのでそのあたりはぜひ読んでいただけると。またスーフィズムにある種のイスラムへの未来を託しているようにも読めましたが、どうなんでしょう。そのあたり良く勉強したいです。

イスラームとは何か (講談社現代新書)
小杉 泰
講談社
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井筒先生のと並んでイスラームについて理解する入門書の定番。ムハンマドのエピソードや歴史、イスラームの様々な文化、スンニ派とシーア派、クルアーン、ハディースなど各種用語がするすると入ってくる良書だと思います。で、イスラームを理解する上で、特にポイントとしてちょっと引用しておくと。

P265-266
イスラームは当初から、小さいながらも都市国家を持って生まれた。その教えは、精神的な宗教だけではなく、それを社会に実体化するための法をも含んでいる。法は人の心に生きるだけではない。法を実施するには、国家が必要であり、社会秩序を維持する権力が必要である。また、領土を防衛し、国内での法の実施を保障する軍事力が必要である、ということになる。
(中略)
イスラームがその(引用者注:キリスト教)場合と違うのは、現実的な力の必要性が宗教理念の中に最初から含み込まれているという点にある。

このように最も発展した形で生まれた宗教であるがゆえの、現実との衝突が現代のイスラーム世界の混迷の背景にあるといえるのではないか、と思います。
これらのほか、政治、宗教、国際関係、アメリカ関連書籍を10冊ほど、〆て20冊ぐらいを参考にしました。それらについてももったいないので追々紹介していくことにしますが、今回はこのあたりで。

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