国際司法裁判所勧告「核兵器の威嚇または使用の合法性」

国際司法裁判所(ICJ)1996年7月8日の勧告的意見「核兵器の威嚇または使用の合法性」より

「その性質自体からして、現存する核兵器における[核分裂または核融合]の過程は、巨大な量の熱とエネルギーだけでなく強力かつ長期にわたる放射線を発生させる。裁判所が手にしている資料によれば、最初の二つの損害原因はほかの兵器による損害に比べて格段に大きい。他方、放射線の現象は核兵器に独自のものといわれる。これらの特徴は、核兵器を潜在的に破滅的なものとする。核兵器の破壊力は、空間または時間のいずれにおいても限定することはできない。核兵器は、地球上のすべての文明とすべての生態系を破壊する潜在力を有するのである。核兵器が放出する放射線は、きわめて広範な地域にわたって健康、農業、天然資源および人口に影響を与えるであろう。さらに、核兵器の使用は将来の世代に対して重大な危険を及ぼすであろう。電離放射線は、将来の環境、食糧および海洋生態系に損害を与え、また、将来の世代において遺伝的障害や疾病の原因となる潜在力を有する。したがって、武力行使に関する憲章の法と武力紛争に適用される法、とくに人道法を本件に正しく適用するためには、裁判所が核兵器の独自の性質、とりわけその破壊力、語り尽くせない人間の苦難をもたらすその能力、および来るべき世代を損なうその可能性を考慮に入れることは、不可欠である。」
松井 芳郎 著「国際法から世界を見る―市民のための国際法入門」(P169-170)

この前提から導き出されるのは核兵器が人道法の原則である「不必要な苦痛を与える兵器の禁止」「攻撃は軍事目標に限る」と決して相容れないものであるとなるはずであったが、かなりアクロバティックな経緯を辿り、核兵器使用の合法・違法を「確定的に判断することはできない」という玉虫色の結論へとなっていった。一方で生物兵器や化学兵器などは大量破壊兵器として使用が禁じられていながら、他方で核兵器に関しては核の持つ圧倒的な力が持つ魅力への抗えなさを背景として、政治という現実的な事情が正当な論理的原則を裏切った矛盾した状況が国際法上現在も続いている。
同書を今読んだところなので、一応簡単にメモ。

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