面白かった2012春アニメ一話6本感想「坂道のアポロン」「ヨルムンガンド」「峰不二子という女」他

実のところ、アニメを見るようになったのは去年からでそれまでは二十年以上アニメとは無縁だったんですよね。記憶にあるのってボトムズとかダグラムとか・・・あたり。去年、「魔法少女まどか☆マギカ」がすごいという話を聞いてふと見てみたらあまりに面白くてそのまま他の作品も見始めて嵌って行ってしまいました。

なんでも今年の4月から放映されるアニメは64本あるのだそうです。これだけの数の中から選ぼうと思っても、視聴者にしてみればすべての情報をチェックできるわけでは無し、前情報やPVなどをざーっと眺めつつ興味がある作品を、時間は有限ですので、無理の無い範囲で観てみて、合わなければ順次見るのを止めていく、ということにならざるを得ません。それほど、例えば子供向けアニメやジブリ作品以外を見る層が多いとは思えないし、以前の僕のように食わず嫌いで敬遠している人が大多数でしょうから、限られたパイを奪い合い、視聴者に選ばれるようにしのぎを削る、現在の大人向けアニメというのは作る側にしてみれば過酷な競争にさらされた環境なのでしょう。

それゆえに、実は傑作、佳作が生まれやすい環境なんじゃないかとも思います。去年いくつかアニメを見た限りにおいてですが、完成された高いクオリティの作品もあれば荒削りな作品、あるいは凡作など、どれもなんだか問答無用の活力が伝わってくるものばかり。あ、今の創作の最前線ってここだったんだ、という発見があったんですよね。例えば八十年代のロマンポルノ業界がその自由さから優秀な製作者の育成の場になっていたような、あるいは七十年代のATG運動とその系譜が邦画の幅を広げた土壌となったような、そういう熱がある。創作の現場がかなり過酷であることは断片的にニュースなどで聞くし、よく内情を知るわけではないので無条件に称揚するつもりはないですが、一視聴者にしてみれば、生み出されたアニメ作品群に、久しぶりの高揚感を覚えさせられたことは確かなわけです。これを体感しないなんてもったいないと思いました。

普通に生きていく上で物語というのは必要不可欠だし、知らず知らず求めていくものであるわけですが、その様々な選択肢からアニメを省くのは、ありか無しかというと無いなー、これまでの人生で食わず嫌いしていたのは無しだったなーという反省が、最近僕をアニメにはまらせている要因です。

まぁ、能書きはこの程度にして、2012年4月期から始まったアニメの一話をみて面白いと思った作品の感想を簡単にまとめです。一応面白かった順に並べるとこんな感じかな。

1.坂道のアポロン
2.ヨルムンガンド
3.ルパン三世 峰不二子という女
4.アクセル・ワールド
5.黄昏乙女×アムネジア
6.ZETMAN

三位以上が抜群で、四位以下もどれもそれぞれ魅力があって面白かったので順位付け辛い、というか順位はあって無いようなものですね。

坂道のアポロン

船員の父の仕事の関係で転校を繰り返すうちに他者からの視線に対して過度の緊張感を覚えてしまう主人公西見薫(木村良平)が感じる圧迫感、その苦痛からの解放を求めて屋上へと走り去る切迫感、そこで出会った不良の少年川渕千太郎(細谷佳正)とのぶっきらぼうな交流と土砂降りの雨を二人して浴びることで広がる解放感、そして後半の気さくな学級委員長の女の子迎律子(南里侑香)の自宅レコード店地下でのジャズとの出会いのシーンの高揚感まで、これぞ青春音楽作品なエッセンスが詰まったとても面白い一話でした。

ジャズには詳しくない僕でも知っているアートブレイキー&ジャズメッセンジャーズの” Moanin’ ”が聴こえてきたときは観ながら、おおお、という声を抑えきれなかったですね。華麗なドラム捌きを見せた千太郎がたどたどしく一本指で鍵盤を叩き、見かねた薫がクラシックの経験を踏まえてスマートに奏で、しかしそれに「スウィングしとらん!」とダメ出しをする、あのやり取りが熱い。それぞれ演奏を分けるピアノ演者の丁寧さがナイスです。

主人公が音楽と出会う、その瞬間にどれだけの高揚感を見せられるか、魅せることができるかが要点だとするなら、あの千太郎のパワフルなドラムシーンは申し分ない出来なんじゃないでしょうか。演奏されたのが何という曲なのか知らないですが。ところで、一九六六年当時ってジャズの輸入盤レコードってやたら高価なモノだったのでは、と思ったりしましたが、まぁお金持ちの「ボンボン」設定だからいいのか。二話以降も最高に楽しみにして待ちたい作品です。

フジテレビチャンネルにて一話が無料公開中。
http://fod.fujitv.co.jp/s/genre/anime/ser5164/5164110001/

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ヨルムンガンド

若い女性武器商人ココ・ヘクマティアル(伊藤静)とその私兵集団の仲間に入ったのはまだ幼さが残る少年兵のヨナ(田村睦心)。褐色の肌からおそらくパレスチナか中東あたり出身だろうか。彼は家族を殺した「武器を考える奴、造る奴、売りさばく奴、使う奴」そのすべてを”永遠に”憎むと語り、そして、武器の恐ろしさを知るがゆえに、武器の頼もしさを知る。その素性を知りながら仲間に迎えたココ、武器商人を憎みながら武器商人の配下に加わったヨナそれぞれの思惑は今後語られるのだろう。

ココ一味が今回目指すのは東欧某国への武器搬入。ココと軍部が進めようとする武器購入を内務省の幹部がそれを阻むのは、軍事バランスが崩れることで一気に国が戦争へと堕ちていく可能性に危機感を抱いているからだ。当然ながらその望みは果たせない。「正義の武器商人」などではないことが突きつけられる。続いて横取りを狙う同業者を「排除」し第一話は終わるのだが、直接手を汚すのは、まだ子供のヨナだ。眉一つ動かさずに、引き金を引く。ばーん。

カーチェイスや銃撃戦のアクションからタフな交渉劇までをがっつり詰め込みつつ、武器や戦争が持つアンビバレントさをはなから内包して進められとてもスリリング。ココの底知れ無さを見せつけた第一話だったと思います。予告BGMの”Her name is Koko,She is loco,I said Oh!No!”が良かった。

余談ですが、主人公の名前の元ネタはアフガニスタンのイスラム系軍司令官グルプディーン・ヘクマティアルでしょうかね。特徴的な名前だけにそうなのだろうと思うのですが。ヘクマティアルは七九年のソ連軍侵攻後パキスタンを後ろ盾としてイスラム義勇兵最大勢力の指導者として戦い勇名をはせた。配下にはビン・ラーディンなど後のアルカーイダ幹部がずらり。ソ連撤退後は新体制に不満を覚え、唐突に首都の市街地にミサイル攻撃なぞして内戦を巻き起こし、あまりに見境なく暴れまわったせいでパキスタンが彼を見捨ててタリバーンを支援しはじめたことでタリバーンが興隆、全盛期のタリバーンと戦って組織を壊滅させられながら、生き延びてイランで再起を図り、米軍侵攻後は方向転換してタリバーンと同盟を組み米軍・アフガン政権に徹底抗戦し続けているという、まぁはた迷惑極まりないトラブルメーカーな人物。関った人物が悉くこの世を去っていく中で、三十年以上に渡り文字通り世界を敵に回して最前線で生き残り続けているリアル「異能生存体」、ブラックラグーン風に言うなら”獣並みの嗅覚で危険をくぐり抜けて生き残り災厄をまき散らす”タイプのヤバい奴です。彼をついつい想起してしまうので、僕の中でココさんの凄味が段違いだったりしています。

バンダイチャンネルで4月14日から最新話無料配信中。
http://www.b-ch.com/ttl/index.php?ttl_c=3281
ニコニコ動画は4月21日から公開予定。
http://ch.nicovideo.jp/channel/jormungand

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LUPIN the Third 峰不二子という女

27年ぶりのテレビシリーズ化らしい、峰不二子を主人公にしたルパン三世の新シリーズ。子供のころに旧テレビシリーズと数本の映画作品を観たっきりだったので近年のルパンと比べてどうなのかというのはよくわからないのですが、例えばルパン三世と聞いて思い浮かべる猥雑なカーニバルやサーカスのような世界でコミカルに、セクシーに、ハードに暴れまわるルパン三世とその一味、というイメージがまさしく具現化されていてとても堪能した一話でした。

第一話は幻覚を起こす麻薬を使った「カルト教団」にその麻薬を狙って潜入した峰不二子(沢城みゆき)とルパン三世(栗田貫一)が初めて出会うという内容で、ルパンはその峰不二子の大胆な行動に感心しつつ、彼女の行動原理として「人を殺すことをも厭わない無軌道さ、自らがどこまで堕ちても構わないその自虐・・・」と語り、その上で彼女に勝負を持ち掛ける。まさに因縁が生まれるその瞬間の描かれ方として最高にクールだと思います。ルパンも不二子も自身と相手の生死をいとも簡単に賭けて、楽しもうとする。

お約束と言っていいベタでわかりやすい展開に古臭いダンディズムとアウトローの美学を振りまくことでエンターテイメント作品として完成させているという印象で、今後も夢中になって楽しめそうなシリーズだと思いました。銭形警部(山寺宏一)が面白おじさんイメージを一新してただモノじゃない雰囲気を漂わせていたのもグッド。今後も楽しみにしたいです。

日テレオンデマンド
http://vod.ntv.co.jp/program/fujiko/
バンダイチャンネル
http://www.b-ch.com/ttl/index.php?ttl_c=3276
でそれぞれ最新話無料

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アクセル・ワールド

一人に一つ、現代の携帯電話のように仮想世界にアクセスすることが出来る機器を所持するようになった近未来の世界の、日常生活に例えばノートを取るとか、おこずかいを貰うとか、コードを直接つなぐことで思考だけで会話できるようになるといった描写がとてもアイデアに溢れていて面白かった。しかし、主人公ハルユキ(梶裕貴)が味わうイジメや疎外感などの現実世界の苦しみがそのまま仮想世界ともパラレルで、それゆえに逃げ場がなくなり、閉塞感が強化されている様子も丁寧に描かれていて、それゆえに彼が現実世界と仮想世界とを過去のものにして加速したいという願望に囚われるまでの説得力がとてもあると思いました。

謎のプログラムが誘う「加速世界」とはどんな世界なのか、彼をその加速世界へと誘う上級生の黒雪姫(三澤紗千香)の意図は何なのか、今後次々展開されるであろう戦闘シーンなど、次回への興味とてもそそられる丁寧な作りの第一話で、おもしろかったです。

バンダイチャンネル
http://www.b-ch.com/ttl/index.php?ttl_c=3239
ニコニコ動画
http://ch.nicovideo.jp/channel/accel-world
でそろぞれ第一話無料

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黄昏乙女×アムネジア

高校の怪異調査部で幽霊の夕子さん(原由実)を中心とした人気コミックのアニメ化作品。一話はまず怪異調査部員の小此木ももえ(福圓美里)が部室で日誌を書くところから始まる。彼女のまわりで次々と不可思議な現象が起こるが、霊感の全くない彼女はなかなか気づかない。さすがに怪異現象さん?もしびれを切らして色々目立つことをやり始め、小此木さんがもしや?と不審に思ったあたりで、部長の新谷貞一(代永翼)と部員の庚霧江(喜多村英梨)が登場、だが二人とも何か様子がおかしい。いない者の相手をしているような・・・

実はお茶目でいたずらっ子な幽霊の夕子さんが色々ちょっかいをかけていたのだが、鈍感な小此木さんは気付かず、しかし他の二人は夕子さんの姿が見えていたというわけ。そのネタ晴らしとして後半で前半と同じシーンに夕子さんが付け加えられてリピートされる。この対比がすごく面白くて、至る所で笑わされながら見ていました。まるでアメリカのホームコメディとか小劇場でかかる舞台劇のような感じで、至る所に観客の爆笑音声を挟みたい衝動に駆られます。小此木さんのピエロっぷりを楽しそうに演じる福圓さんが上手い。

幽霊なりの悲しみや秘密がどうやらあるようで今後そのドラマティックな面が明らかになっていくのだろうという期待感と、季節は秋だろうか舞い散る紅葉した葉の美しさなど映像美も魅力的でした。

ニコニコ動画で4月27日より公開予定
http://ch.nicovideo.jp/channel/amnesia-tv

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ZETMAN

ヒーロー漫画の大家桂正和氏によって十年以上連載されている同名コミックのアニメ化作品。原作は作品のキャッチコピーにもなっている通り、正義のヒーローを描き続けていた桂氏が「正義とは何か」を正面から問う、彼のキャリアの集大成的な意気込みで始めた作品らしく、ダークで骨太な、文字通り容赦無い展開がじっくりと描かれる。お色気、ラブコメ色のイメージがあったが一切といっていいぐらいに影をひそめている。デザインもそうだがアメコミのバットマンとかダークマンとかそういうテイストを意識しているのかもしれない。

アニメは原作のテーマやストーリーを踏襲しつつ、かなりテンポよく再構成されているようで、一話の30分でほぼ一巻分+他の巻に散らばっている過去エピソードを踏まえて色々オリジナル展開をさせつつ終わっていた。原作ファンとしてはとても満足いく出来栄えで、後々ぶつかっていくことになる様々な勢力の思惑や、二人の主人公の幼少時の対比が上手く描かれていたと思います。

主人公二人、ホームレスの老人神崎悟朗(千田光男)に育てられたやさぐれているが純朴な少年神崎人(朴呂美、成長後:浪川大輔)と、大富豪の御曹司でまっすぐな正義感と行動力の天城高雅(甲斐田ゆき、成長後:宮野真守)の対比は後々の伏線として効いてくるだろうし、ジンの育ての親になる明美さん(早見リサ)の抱擁シーンや包帯を巻いた笑顔のシーンは原作でもそうだけどほんと泣かされます。というか歳を取るとこの人の登場シーンのほとんどに心動かされるんじゃないでしょうか。

二話もより明確に主人公二人の対比が描かれはじめており、やがて姿を現すであろうEVOLとの戦いやその周囲で画策する大人たちのドラマに否が応でも期待が高まる完成度でした。早いうちから登場する灰谷が原作以上にいいですわー。

ニコニコ動画で第一話無料、最新話一週間無料
http://ch.nicovideo.jp/channel/zetman

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他、「這いよれ!ニャル子さん」、三か月の間をおいて再開の「Fate/Zero」、前期から継続の「モーレツ!宇宙海賊」を楽しみにしています。特にモーパイ、回を重ねるごとに格段に勢いがついて、文字通り面白さ天井知らずで凄い。

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