解き明かされるエモーショナルな真実~「氷菓」1~5話感想

現在放映中のアニメ「氷菓」がとても面白い。原作は米澤穂信氏による高校の古典部を舞台にした四人の男女の青春ミステリー「古典部シリーズ」の「氷菓」「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番」「遠まわりする雛」という四冊の小説。アニメを見てあまりにも面白かったので原作の一巻「氷菓」を最近読んだ。せっかくなので一巻に該当するアニメ1~5話について簡単に感想をまとめておこうと思う。

神山高校に入学した省エネをモットーとする青年折木奉太郎は、古典部OBの姉の命で廃部寸前の古典部に入部させられる。入部手続きを済ませて一人もいないはずの古典部の部室に行ってみると、そこに居たのは地元の名家のお嬢様で同じく神山高校に入学したての千反田える。彼女は「一身上の都合」で古典部に入部したいのだという。二人とともに折木の古くからの友人福部里志と伊原摩耶花の四人が、高校生活を送る中で直面する、ささやかだけど、活き活きとした様々な謎を解き明かしていくというもの。

何故教室の鍵はかかっていたのだろう?何故この本は図書館から毎週借りられているのだろう?先輩は何を隠したがっていたのだろう?といった本当にささやかな日常の謎解きから始まり、やがて千反田さんが古典部に入部した「一身上の都合」が明かされることによって、ある人物の人生を振り返る旅へと彼らを誘い、その謎が解かれた時、感情を揺さぶられずにはおかない真実へと辿り着かせることになる。

僕のツボにはまったのが、まさにこの歴史を丹念に振り返っていくことで見えてくる名もなき人のある感情の発露だった。人生の局面において何故に彼はそうあらねばならなかったのか、なぜにその感情をぶつけずにはいられなかったのか、という人生の謎解きへの執着こそが、ここ数年の僕のライフワークと言っていいものだった。ブログにも色々そのような記事を書いたりしてきているが、まさにその人の営みへと淡々と向かい合うことに至上の喜びを感じずにはいられない。この作品はまさにその人生の謎解きがあったがゆえに、愛おしく感じたのだった。

登場人物の中では主人公の友人福部里志の立場が自分と近しいものを感じる。省エネ主義で何事も極力積極性を表さないが、資料を踏まえての天才的な推理力を発揮する主人公折木奉太郎に対して、敬意を表しつつも微妙な距離を持って付かず離れずの友人関係を保つ、幅広い知識をもちデータベースを自任する彼の言動は共感してしまうものがある。「灰色」の奉太郎に対して自身を「ショッキングピンク」と言い、省エネ主義に対して部活を掛け持ちして積極的に活動し、直感的な天才肌の主人公に対してデータベースとしての自分を殊更強調するのは、関係性の中でのアイデンティティを自覚的・無自覚的に関らず模索する苦心の表れなのだろう。

ただ里志的「データベース」という生き方はいつしか千反田さん的な「私!気になります!」というシステム化の欲求に囚われることになるとも思う。成長する過程で、知識ではなく物語を希求する時期が必ず訪れて、そのとき自身が溜めこんだデータを体系化したいという願いに駆られる。そのとき「データベースは結論を出せないんだ」という自身の生き方との相克が、敢えて距離を置いた奉太郎的な構想力と向き合わせることになるのだろう。その彼らの化学変化は見てみたい気がするが、まぁそれはまた別のお話か。というように、登場人物の人間関係も定番なようでなかなかダイナミズムがある構成になっていると思う。

原作小説の方はささやかな謎から最後までかなり論理的に証拠と推理を積み重ねて日常のミステリーが一つ一つ明らかになる醍醐味がある佳作で、とても小説的なのに対して、アニメ化されたそれは様々な映像表現と、細部にまでこだわった風景や登場人物のささいな動きなど日常のリアルとアニメ的表現とをバランスよく配置した、とても映像的な作品になっていると思う。一話のメデューサ的に絡みついてくる千反田さんは流石に笑っちゃったけども、喫茶店での会話の間とか、小動物っぽい摩耶花の動きとか、自転車ですいすい進んでいくシーンとか、文字が崩れ落ちあるいは浮かび上がる表現とか、飽きさせない。

今後も丁寧に日常の営みと謎解きとを積み重ねながら良作になっていくんだろうなぁという期待感に溢れているので、毎週放送を楽しみにしています。各巻分の放送が終わったら、続けて原作も読んでいこうかなという気持ちにさせられますね。

The niece of time.
氷菓 限定版 第1巻 [Blu-ray]
角川書店 (2012-06-29)
売り上げランキング: 25

>

氷菓 (角川文庫)
氷菓 (角川文庫)
posted with amazlet at 12.06.07
米澤 穂信
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 1254

愚者のエンドロール (角川文庫)
クドリャフカの順番 (角川文庫)
遠まわりする雛 (角川文庫)

スポンサーリンク
スポンサーリンク

フォローする

関連コンテンツ

スポンサーリンク
スポンサーリンク