"厨二病"の奥にある切なる願い「STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)」感想

STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)」は2011年4月から9月末まで放映されたアニメ作品。秋葉原を舞台に、マッド・サイエンティスト鳳凰院凶真を自称する大学生岡部倫太郎(通称オカリン)が友人たちと発明サークル「未来ガジェット研究所」を主宰して色々な発明品を作っていたが、偶然彼らが作ってしまったある画期的発明品によって壮大な事件に巻き込まれていく、というもの。
主人公岡部倫太郎は”機関の陰謀”とか”世界の選択”といった陰謀論的思考に囚われた、いわゆる”厨二病”の青年で、その挙動は滑稽さを通り越して痛々しさすら覚える。初見の時はそれが受け付けなくて一話が始まって5分もせずに途中で観るのを止めていた。
陰謀論的思考に対して、僕は言葉にならない哀しみを覚える。それは曖昧で不確かな世界に”陰謀を張り巡らせる巨大な敵”を想定することで、確かな自己を掴もうとする切なる希望から発しているからだ。アイデンティティ獲得のために、様々な”設定”や独特の名称を編み出してそれを次々と積み重ねることで自己確信を得ようとする、無益で、しかし切実な、誰もが陥るかもしれない願いゆえに、哀しい。
初回途中で観るのを止めていたのは、この作品はそのような”厨二病”という陰謀論的な振る舞いの滑稽さを嗤う作品なのかと勘違いしたからだ。しばらくして、どうやらそうではなく、非常にシビアで緻密に物語を積み重ねていくSF作品であるらしいと耳にして、後からニコニコ動画バンダイチャンネルなどで追いかけたのだった。
最後まで観ると、陰謀論的思考を嗤うものでは全くなく、むしろその”厨二病”的振る舞いによって誤魔化し続けていた自己の姿を、シビアな状況に追い込まれていくことで、そのうわべを捨て去り、自己を見つめ直して、非情な決断をせざるを得なくなる過程を丁寧に描いた作品だった。彼が厨二病的振る舞いを身に着けることになった過去が語られるあたりは泣けた。というか、後半は毎週の様に泣けた。
じわじわと伏線が張り巡らされつつホラー的展開で追い詰められていく前半、もはや逃げ場がないのだと悟らされる9~12話、フリーフォールさながらの落下が始まる13~15話、怒涛のジェットコースター展開に入る16~22話、そして絶望の中から希望を見出して大団円へと至る最終盤と、練りに練られたストーリーにもうぐうの音も出ない。正直、2011年に観たアニメでは五指に入る満足度だ。また声優陣の演技も素晴らしくて、深夜アニメ作品の層の厚さを思い知らされた。
ありとあらゆる場面がことごとく伏線として機能していく、緻密に緻密に計算された作品なので、特にSFミステリーが好きな方はとてもハマるのではないだろうか。ただし、壮大な規模、ではなくあくまで個人の決断とささやかな幸福へと収斂していくため、世界が~といった大仰なセリフや設定はあるていどガジェットとして観ておいた方が良いし、そういう世界背景が深く描かれたりする訳ではないので、期待する方向を間違うと、がっかりするかもしれないが、それはこの作品の価値を減じるものではないと思う。
また、劇場版の製作が予定されているということらしいのだけど、すごく綺麗に完結したのでどういうお話になるのか興味津々です。
余談だがこれが放映されている間、この作品の舞台となった秋葉原の柳森神社(作中では柳林神社)の紹介記事(参照)へのアクセスが急増していた。なかなか面白い神社なので聖地巡礼を抜きにしてもおすすめ。
ちなみに推しラボメンは鈴羽です。

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