“青春のかすり傷”系作品の傑作の予感「ココロコネクト ヒトランダム編」感想

2012年7月から放送中の深夜アニメ「ココロコネクト」が抜群に面白い。今放送しているアニメの中では個人的にナンバーワンだと思う。以前二話まで観た時点で簡単に紹介したとおり、高校一年生の同じクラブに属する五人の男女に突然、互いの人格入れ替わるという現象が起き、それは無作為・不定期に次々と発生するようになる。その異常な事態に困惑する彼らの様子が描かれていく、というあらすじで、その人格入れ替わりを通してそれぞれの抱える様々なトラウマや苦悩が浮き彫りになっていく。この人格入れ替わりをテーマにした回は「ヒトランダム」編と呼ばれて第五話までで完結し、第六話以降はまた別の展開になるらしい。

このような青春時代に直面する心の傷や関係性・アイデンティティの再構築というような種類の作品は個人的に非常に好みで、勝手に「青春のかすり傷」系と呼んでいる。アニメは詳しくないので映画で例に出すと、「ゴーストワールド」「ヴァージン・スーサイズ」「ショー・ミー・ラヴ」「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」「リアリティ・バイツ」「インディアナポリスの夏」「SLC PUNK!!!」、邦画であれば「キッズ・リターン」「害虫」「青い春」といったあたりが代表作だろうか。古くは「サタデー・ナイト・フィーバー」などがルーツに来る。

大人であればかすり傷なのだけど、青春時代ではその傷の対処がわからず戸惑ったり、気付かぬうちに傷が深くなっていったり、前のめりに突き進んでかすり傷を全身に浴びてしまったり、じわじわと傷口から染み出す血に死を強く意識させられたりすることで、関係性や自我の問題に直面して、概ね単純なハッピーエンドとは若干の距離を置くビタースウィートな結末を辿る、という作品群と漠然と捉えている。あと舞台設定がいわゆるサバービア(郊外)の場合が多い。

ココロコネクトでも人格入れ替わりを通して、それぞれが抱える傷が浮き彫りになる。男性恐怖症、他者への不信と自己嫌悪、家庭内の問題から生じるアイデンティティの危機などの傷に、持ち前の自己犠牲精神でそれらに傷に向かい合うカウンセラー的立ち位置の振る舞いをする主人公。しかしやがてその自己犠牲精神が自己満足でしかないという事実と直面せざるを得なくなる。そして死の重みが彼らを覆う。
狂言回しとして、彼らを人格入れ替わりという事態に陥らせ、その人間模様を観察する謎の「フウセンカズラ」と名乗る存在(フウセンカズラは英語だとHeartseedであるのも面白い)や、「フウセンカズラ」の依り代であるが普段はお気楽な教師である後藤先生、レズビアンの同級生藤島など脇役たちも物語の中で重要な役割が与えられている。

二話のヒロインの一人永瀬伊織が男性キャラ青木義文の体で主人公八重樫太一に語った台詞はヒトランダム編のテーマを象徴していて印象的だ。

「私たちは暗黙の裡に魂とか意識とか人格というものでもって、私たちは私たちたりえる、と判断しています。
それは今、青木の体に永瀬伊織の魂が込められているこの存在を永瀬伊織として認める、ということです。
ですが、その魂や人格と呼ばれるものは触れることも視認することもできません。
ですから普段の我々は、身体でもって、その人物がその人物であると判断しています。
つまり、身体というものは我々にとって絶対の拠り所となるものなのです。
しかし、その身体が、例えば、人格入れ替わりで曖昧なものになってしまったら、我々は我々として存在し続けることができるのでしょうか。」
「ココロコネクト ヒトランダム」第二話より

「私たちたりえる」ためには他者の存在、他者からの承認があってはじめて私たちたりえる、というところがこの物語上ポイントになっていく。文字通り五人の関係性の中で浮かび上がるそれぞれのアイデンティティがどのように獲得され、そのために何を克服しようとするのか、と言うところが見所の一つだと思う。

この人格入れ替わりという超常現象によってアイデンティティが揺るがされて、関係性の再構築へと物語は否応なく進むのだが、その様子を時にコミカルに、時にシビアに描きつつ毎回起承転結を綺麗に押さえた洗練された展開が繰り広げられる。ストーリーテリングの妙を充分に堪能できる作品だろう。クライマックスの五話はかなり感情が揺さぶられる。

あわせて、声優陣の演技にも注目だ。声優はそのままで中身のキャラクターだけが入れ替わるので、その都度演技を変えてそれとわかるように誰もが素人目にもわかるぐらい高度な技術で適切に演じている。男性声優二人による男の子の外見での女の子演技なんか最高だ。ヒロインの一人稲葉姫子を演じる峰不二子役でもお馴染み演技派声優沢城みゆきさんが次々と様々なキャラの超難しい演技をこなしていく無双っぷりは流石の一言。沢城さんの四話の罵倒から衝撃の告白の展開は色々破壊力抜群だった。

ヒトランダム編以降、キズランダム。カコランダム、ミチランダムと続いていくようなので以後も楽しみにしたい。TOKYO MXで毎週土曜日深夜一時から放送中、他ネット配信などもあるので、今からでも一話から後追いが可能です。はい。

ココロコネクト [最新話無料] – ニコニコチャンネル
「ココロコネクト」 | 【アニメ】はバンダイチャンネル

ココロコネクト ヒトランダム 上 (初回限定版) [Blu-ray]
キングレコード (2012-10-24)
売り上げランキング: 61,139

ココロコネクト ヒトランダム 下 (初回限定版) [Blu-ray]
ココロコネクト キズランダム 上 (初回限定版) [Blu-ray]
ココロコネクト キズランダム 下 (初回限定版) [Blu-ray]
ココロコネクト カコランダム (初回限定版) [Blu-ray]
ココロコネクト ミチランダム 上 (初回限定版) [Blu-ray]

ココロコネクト ヒトランダム (ファミ通文庫)
庵田 定夏
エンターブレイン
売り上げランキング: 281

ココロコネクト キズランダム (ファミ通文庫)
ココロコネクト カコランダム (ファミ通文庫)
ココロコネクト ミチランダム (ファミ通文庫)

スポンサーリンク
スポンサーリンク

フォローする

関連コンテンツ

スポンサーリンク
スポンサーリンク