米国大統領選挙共和党副大統領候補ポール・ライアン氏について

米共和党の副大統領候補、42歳のライアン氏  :日本経済新聞

米国大統領選で共和党大統領候補ミット・ロムニー氏陣営の副大統領候補にポール・ライアン氏が決まったとの報道があった。ライアン氏は特に現在の共和党の政治手法を代表するような人物でもあるので簡単に触れておきたい。

ライアン氏は米国のリバタリアンの多くがそうであるように若いころにアイン・ランドに傾倒したこともある新自由主義者、減税至上主義者でサプライサイダーの代表的な人物であり、特に共和党内では非妥協的な政治姿勢で知られる。

一九九八年に下院選に当選後キャリアを重ね、頭角を現すのが二〇〇六年に共和党が中間選挙で大敗してからだ。共和党下院院内総務エリック・キャンター、党幹事ケヴィン・マッカーシーとともに下院予算委員長だったポール・ライアンは二〇一〇年の中間選挙に向けて「ヤング・ガンズ」という新人発掘プロジェクトを立ち上げ、二〇一〇年の中間選挙で九二人の「ヤング・ガンズ」を擁立、そのうち六二人が当選した。

『3人が共和党内において急速に存在感を増したのは、2008年大統領選挙における共和党の大敗後に起きた党内の路線闘争においてである。それまでのジョージ・W・ブッシュ前大統領及び選挙参謀のカール・ローブが推進してきた戦略は、一言でいえば、黒人やヒスパニックのうち文化的争点に関して保守的な層を民主党から離反させるというものであった。これに対してキャンター一派は、財政保守主義への回帰こそが共和党再興の道だと説いた。そして財政赤字がもたらす不確実性が雇用不安の原因だという論法で、財政再建を中心争点に位置づけるべきと繰り返した。』(「ティーパーティ運動の研究―アメリカ保守主義の変容」P99)

二〇一〇年に当選した「ヤング・ガンズ」はそのまま共和党内の財政保守主義勢力として機能する。ティーパーティ議員連盟と連携してオバマ政権と共和党ベイナー下院議長との歳出削減+増税による財政再建の取り組みに圧力を加えて頓挫させ、連邦政府債務上限を巡る共和党と民主党とのやり取りでも、共和党上層部に圧力をかけて「ヤング・ガンズ」と「ティーパーティ議員連盟」は断固拒否の非妥協的な姿勢を貫いたことで共和党も強硬姿勢に出ざるを得なくなり、その議会対立によって米国債格下げを招いた。特にライアンは著書で『民主党と妥協し財政規律を失った』共和党ベテラン議員への憤りをあらわにしていたという。

二大政党制が米国で曲がりなりにも機能していたのは共和党と民主党が政党間の歩み寄り妥協点を探る柔軟性を有していたからだが、ニュート・ギングリッヂの登場以降共和党はポピュリズム的手法を繰り返し、非妥協的な政治手法を多く活用するようになった。現在の共和党の下院議長ベイナーはギングリッヂの直弟子に当る人物だがむしろきちんと民主党との妥協点を探る旧いタイプの政治家で、逆に若いライアンの方がギングリッジ的な手法の後継者的な位置づけであるようだ。

そして、こういう断固とした姿勢というのは往々にして人気が出る。ハンサムでエリートで、かつ敵(民主党)に対して非妥協的、ティーパーティという民意に理解を示し、強いリーダーシップをアピールし、さらに手足となる組織を持っている。支持者や政治理念を共有する人々にとっては頼もしいことこの上ない。それゆえ若くして副大統領候補に上り詰めてきたのだろう。なんだか、実はその非妥協的な政治姿勢は政治理念というよりはただのポーズで、野心のためなら自国の政治経済を危機に追い込むことも辞さない、という印象も拭えないのだが。

人気・実力を兼ね備えているようだが、個人的には政治家としてあまり誠実な人物とは思えない。まぁ順当に行けば将来の大統領”候補”になる。ニュート・ギンギリッジにしろラルフ・リードにしろ良くも悪くもこういう人物が若くして頭角を現してくるというのはアメリカらしいと言えなくもないなぁと思う。おそらく彼を副大統領候補にしたことで、ロムニー候補への支持は多少なりとも上がるのだろうが、オバマ優勢は動かなそうではあるし、ライアン氏としても次へのステップと考えているのだろう。

参考書籍

ティーパーティ運動の研究―アメリカ保守主義の変容
久保 文明 東京財団・現代アメリカ研究会
エヌティティ出版
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