傷つけあう関係性の和解と再生を描く良回「ココロコネクト キズランダム編」感想

承前:ヒトランダム編感想
“青春のかすり傷”系作品の傑作の予感「ココロコネクト ヒトランダム編」

「人格入れ替え」が行われた第一部ヒトランダム編に続いて第六話から第十話にかけてはキズランダム編として文研部五人に対して「欲望解放」に見舞われることになった。前回のヒトランダム編での感想で「青春のかすり傷系」という言葉に分類してみたが、ヒトランダム編以上にその典型的な展開を辿っていく感じだ。

普段は理性で抑えているはずの、したいと思う様々な欲求の歯止めが利かなくなって、そのまま実行に移してしまうというもので、睡眠欲、食欲といった個人的なものから、怒り、悲しみといった感情の発露、さらにはそっと我慢していた他者への思いまで、ありとあらゆる欲求がむき出しになる。さらにその欲望は解放されるだけでなく、あたかも増幅しているかのようにも見える。

他校の男子生徒に言い寄られる同校の女子生徒を救うために暴力を振るってしまう空手少女桐山唯、警察に連行される唯を助けようと暴れてしまう青木義文、自身の行為に落ち込んで不登校になる唯を慰めようとするが、そこで唯を鋭く責めてしまう稲葉姫子、唯を傷つけたことに自分が傷ついてしまい心を閉ざす稲葉を、さらに追い詰めてしまう八重樫太一、唯を救おうという意見の相違から仲たがいしてしまう太一と青木、そんな彼らの狭間で曖昧な自己に悩む永瀬伊織は欲望解放を通して本当の自分が見出せるのではないかと淡い希望を寄せるが、徐々に文研部は「バラバラと崩れ」、「誰も居なくなって」いく。

欲望解放を通して彼らはお互いを傷つけあい、そして友人を傷つけてしまうかもしれないという怖れから萎縮して、徐々にその関係性から距離を置こうとする。大切な誰かを傷つけるぐらいなら、その仲間と距離を置いてしまおう、自分が傷つくぐらいなら、殻に閉じこもってしまおう、という怖れと、いかに彼らは向き合い、和解し、再生を遂げていくのか、というところが今回のエピソードの見所だ。
前回のヒトランダムでは人格入れ替えを通して五人がそれぞれ抱える悩みと向き合うことで解決へと向かって行った。今回は向き合うことへの怖れが彼らを襲う。五人だけで解決することが困難な状況におかれたことで第三者的なキャラクターが良き助言者として活躍の場を与えられる。飄々とした雰囲気で味わい深い助言を与える後藤先生にはぐっと来たが、きらりと光る名メンターぶりだったのはヒトランダム編に続いて学級委員長藤島だ。

「じゃぁね八重樫君、どっちが大切なの?
その相手を傷つけないこと?それとも話し合って何かを達成すること?
本当に自分が大切にしていることは何なの?それを考えたら?
覚悟と信念をもって一番大切なものを決めさえすればあとは案外何とでもなるものよ。
逆にそれを決めないとどうにもならないことも多いんじゃないかしら。
ついでに言っとくと、私は人って傷つけあうものだと思ってるけど、まぁ八重樫君がどう考えるかはご自由に、って感じね。」第八話

レズビアンとして描かれる彼女は、作中でも冗談でだが、永瀬伊織に迫って本気で拒絶されて「冗談よ。こんなに拒絶されるとは思わなかったけど」と軽く流して見せているが、おそらく様々な形で何度も傷ついてきたのだろう。その言葉通りマイノリティとして「覚悟と信念をもって一番大切なものを決めて」生きてきたのだろうという雰囲気が、演じる伊藤静さんの凛とした演技も相まって台詞の端々から感じられる。彼女をはじめとする脇役の繊細なキャラクター造形は見事だ。

周りの様々な人々に背中を押されて、主人公の八重樫太一が傷つけあうことを受け入れ、離れ離れになりつつあった仲間たちと向かい合い始める。ヒトランダム編では太一が他のメンバーと向かい合うことで前に進んでいったが、今回はそれぞれがそれぞれと向かい合うことを決断していく過程が描かれる。その端緒になるのは太一だが、太一はまず永瀬と、続いて青木と向かい合い、それが連鎖していくことになる。青木は唯と、唯は青木や太一と、永瀬は稲葉と、稲葉は永瀬、そして太一とそれぞれ向かい合い、傷つけあうことを受け入れながら、赦し合い、和解し、そして関係性の再生へと物語を進めていく。赦しとは憤りを克服すること、和解は関係の修復や新たな創造を意味する。

このプロセスは伏線が張り巡らされ、台詞の一つ一つが計算されており非常に練りに練られたストーリーテリングの妙が味わえた。それぞれのキャラが対照的でかつ相補的なのだ。キュートで弱そうな外見と裏腹に非常に激情的な面を覗かせる伊織と、激情的で強そうな外見と裏腹に本心と壊れそうな弱さをひた隠しにする稲葉、あるいはその稲葉と見た目は同じように強そうに見えるが、芯の弱さを隠す鎧でしかない稲葉に対して、本当に強くて包容力がある藤島という対比はとても面白い。

前回のヒトランダム編の感想で狂言回しを演じる<フウセンカズラ>の英訳がHeartseedで、色々示唆しているのではということを書いたが、今回はさらにフウセンカズラはHeartseed=心の種とでも言うような振る舞いをしてみせているのが面白い。やはりこのネーミングは英訳を踏まえたものだろうか。

物語は六~八話で急降下し八話の藤島さんの助言を経て九話から十話にかけてクライマックスへと収束していき、十話の最後にはカタルシスが待っている。辛いこともあったけど、最後は笑顔で迎えられて、一話より五話、五話より十話と少しずつ前進していっているのがよくわかるので、ビタースウィートではあるけれど、幸せな物語なのだと思う。とりあえず回を追うごとにどんどんいなばーんが可愛くなっていくのでやばい。沢城さんは前回以上に多様な演技を使い分けてすごい。とはいいつつ個人的にはメインの五人以上に藤島さんがやはり魅力的だと思う。

以後カコランダム、ミチランダムと続いて全十七話で終わるとのこと。今氷菓やTARI TARIと並んで楽しみにしている深夜アニメ作品ですね。

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