生きるのを諦めるなッ!!「戦姫絶唱シンフォギア」感想

ノイズと呼ばれる人間が触れると炭化してしまうモンスターの大群が日常的に襲い掛かってくる近未来の世界、その脅威に立ち向かえるのは歌によって起動するシンフォギアシステムと呼ばれる伝説の聖遺物を身に纏う少女たちだけだった、というSFアクションアニメ作品。

東日本大震災という激甚災害に見舞われた現在の日本社会を大いに意識した作品で、不条理で無慈悲で残酷な災害にあってもなお、その苦境から立ち上がろうと、困難に立ち向かおうとする人々に声援を送るという趣旨で作られている。テーマは非常にシンプルだ。

この作品のテーマは作中で何度も繰り返し叫ばれる台詞「生きるのを諦めるなッ!!」ということであり、その「生きる」ことを諦めそうになった人たちに、あるいは諦めない人たちを、歌で勇気づけようとするものだ。音楽が奇跡の力を持つ、という幻想は使い古されて色褪せているテーマでもあるが、その”陳腐”なテーマを真正面から描こうとする青臭さはとても心地よい。音楽が世界を救う、とか今の世の中鼻で嗤われてしまいかねないファンタジーを信じ込ませる剛腕展開が熱い。

このテーマで一本筋を通して、強く訴えるために、作品の「勢い」が重視される。細かい整合性とか複雑な構成、重層性、などよりもハッタリや見栄、見得などケレン味と呼ばれる演出が前面に押し出されてくる。歌いながら戦い、必殺技を繰り出すときは毛筆の技名題字とともに見得を切り、大仰なセリフ回しで大いに叫び、泣き、笑う。

遊び心も忘れない。修行と言えばブルース・リーだろ、肉弾戦なら八極拳だろ、剣戟は火花散るだけじゃ物足りない、いっそ巨大化させて天から突き落としてしまえ、女の子は固定砲台化して追尾ミサイル連弾してこそ燃える、壊すなら大きければ大きいほど良い的クライマックス展開、などなどなど、深夜アニメならではのエンターテイメントさがこれでもかとばかりに詰まっている。深夜アニメ界に映画秘宝があったら全力で特集しているレベル。

歌いながら戦うので、その製作は非常に大変だったらしい。伊藤監督のツイートによると、『コマ数換算表を使って、どのセリフに何小節必要か…とか、決めにサビを持ってくるには、どのカットをどのくらいの長さにするか…とか、パズルのように組み立てて行きます』とのことで、技術的なことは良くわからないけれども、相当計算されて作られていたことが伝わってくる。細かいことはどうでもいいんだよ的な楽しくてわかりやすい王道作品を、全力で緻密に計算しながら作り上げるという姿勢はとてもすばらしい。

この作品の命である歌もクオリティは抜群で、声優陣も本職の歌手や歌唱力に定評のある実力派声優がずらりと並び、懐かしの九〇年代サウンドには惚れ惚れする。第一話のツヴァイウィングライブシーンとか、アニメスタッフの渾身の仕事っぷりが超すごい。公式にそのシーンだけアップされているぐらい自信をもっているようだ。

戦姫絶唱シンフォギア 第1話 ライブシーン映像(公式)

キャラクターソングはどれも絶品だけどツヴァイウィング(高山みなみ&水樹奈々)の二曲と風鳴翼(水樹奈々)の「絶刀・天羽々斬」は流れてくるだけでテンションがあがる。特に「絶刀・天羽々斬」の歌詞は自称防人の彼女らしい修羅とか無常とか浄土とか羅刹とか中二病ご用達仏教用語満載の文語調で詩的な歌詞になっていて仏教ロックとでもいうような何が何だかよくわからないのにとにかく鋭くかっこいい。

戦姫絶唱シンフォギア キャラクターソング1 ツヴァイウィング
戦姫絶唱シンフォギア キャラクターソング3 風鳴翼

余談だけど、悠木碧さんの仕事チョイスは素晴らしい。「魔法少女まどか☆マギカ」で賞を総なめにする名演技を見せた後が「ベン・トー」とこの「戦姫絶唱シンフォギア」って、例えるなら「一七歳のカルテ」でオスカー獲った後に「60セカンズ」や「トゥームレイダー」に出たアンジェリーナ・ジョリーみたいなもので、そのチョイスは個人的にとても好感を持っている。さらにその次は、途中脇役は色々あるけど、「咲 阿知賀編」だしね。

余談ついでに水樹奈々さんは紅白で「恋の桶狭間」歌えばいいんじゃないかな!

命を賭して戦場(いくさば)に赴く少女たちだが、それを支える大人たちの重要性もまた極端にデフォルメする形で描かれている。主人公を統率する風鳴司令は素手でアスファルトをひっくり返したり、完全武装の主人公たちを素手で吹っ飛ばしたりと人智を超えた強さで思わず笑ってしまうのだが、それらは全て「大人だから!」の一言で説明される。大人たるもの、アスファルトぐらいは軽く吹っ飛ばせる。大人はこれほど力強い。すばらしい。

風鳴司令の名シーンは数あれど、想定外の攻撃に臨機応変な対応を指示したときに「勝算は?」と聞かれ、さも当然のように「思い付きを数字で語れるかよ!」と返すシーンが最高だ。仰る通り。

あと、一話早々で退場するメインキャラが、その後もずっと思い出として、あるいは登場人物の心の支えとして描かれていくのも、喪った人の重みの癒しのプロセスを描く手法として効果的だと思う。それぞれが彼女を背負い、彼女に支えられながら生きて、その痛みを昇華させようと戦い続ける。視聴者側も回を追うごとにどんどん彼女の存在が大きくなっていく。

『私が誰かを助けたいと思う気持ちは、惨劇を生き残った負い目なんかじゃない!二年前、〇(ネタバレ伏字)さんから託され私が受け取った、気持ちなんだ!』(8話)

哀しい結末を予想させつつ、最終的に大団円に至るまでのド王道展開、見せ場に次ぐ見せ場のジェットコースターな後半は楽しすぎて泣いた。そう。楽しいと泣ける。最短で、最速で、真っ直ぐに、一直線に突き進む、怒涛のごった煮SFミュージカル美少女戦闘アクションエンターテイメント、それが戦姫絶唱シンフォギアだ。二期決定楽しみにしています。

関連サイト
戦姫絶唱シンフォギア 公式サイト
戦姫絶唱シンフォギア – ニコニコチャンネル

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戦姫絶唱シンフォギア キャラクターソング1 ツヴァイウィング
ツヴァイウィング 風鳴翼(cv:水樹奈々) 天羽奏(cv:高山みなみ)
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戦姫絶唱シンフォギア キャラクターソング2 立花響
戦姫絶唱シンフォギア キャラクターソング3 風鳴翼
戦姫絶唱シンフォギア キャラクターソング4 雪音クリス

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