「TARI TARI」感想~ひたむきな青春だったり、大人の人間ドラマだったり、奏であう音楽だったり

江の島の音楽科・普通科併存の私立高校白浜坂高校を舞台に、音楽家だった母の死から音楽と距離を置こうと普通科に編入する坂井和奏(演:高垣彩陽)、かつての発表会での失敗から声楽部に居場所が無くなってしまった宮本来夏(演:瀬戸麻沙美)、来夏の親友で弓道部に所属し乗馬に夢中な余り騎手を夢見る沖田紗羽(演:早見沙織)の三人の女の子と、バドミントンで全国大会を目指す田中太智(演:島崎信長)、オーストリアからの帰国子女で編入したてのウィーンこと前田敦博(演:花江夏樹)の五人の高校生と、それを取り巻く様々な人たちが音楽を通じて繋がり、響きあっていく様子を丁寧に描いた青春アニメーション作品。

主人公五人はそれぞれ置かれた環境や目指しているものが全く違うが、その全く違う五人を「合唱」が繋ぎ、ともに歌うことによって響きあい、物語を動かしていく。五人に共通するのは目の前の出来事や自分の人生に対する懸命さ、ひたむきさだ。美麗に描かれる江の島の風景同様にその情熱がキラキラと輝いてとても眩しい。それぞれが一途に生きているから、自然とお互いを支え合い、そのひたむきな姿が、登場人物たちの歌声の美しさを、より美しく聞こえさせる。「音楽」と「ひたむきさ」をキーにしてそれぞれ個性的な一様でない登場人物たちのアンサンブルとして存分に描いているところにこの作品の第一の魅力がある。

第二の魅力が、喪失と再生の物語である点だ。和奏の母まひる(演:大原さやか)は和奏が中学生の時に亡くなったが、彼女の存在は多くの登場人物を動かす要因になっている。

母とともに音楽を作るという約束はもう叶わないことが、和奏を立ち止まらせ、後に前に進ませることになるし、和奏の父にとっては妻への想いが娘を見守らせているし、また白浜坂高校校長にとってはまひるは思い出深い教え子であり、教頭の高倉直子(演:田中敦子)にとってはともに合唱部で曲を作った親友であり、沖田紗羽の母(演:能登麻美子)にとってはまひると教頭は同じ部活の先輩であった。また、ベテランのラテンバンドとして登場するコンドルクインズはまひると共に作った曲が唯一のヒット曲で、まひるの音楽への想いを胸に音楽活動を続け、主人公の一人宮本来夏は、そのコンドルクインズの曲を幼い日に祖父とともに聴いたことが音楽への情熱を目覚めさせるきっかけになっていた。

死者の想い、死者への想いが登場人物を突き動かし、悩ませ、あるいは心の支えになっていくことで、物語の軸として機能している。もう決して会うことのできない死者との関係をいかに修復し、自分の人生の中にその想いを織り込んでいくことで、和解と再生の過程を辿っていくことが出来るか、というテーマがひたむきな主人公たちのポジティブストーリーを支える土台として機能している。

第三に、大人たちのドラマの深みである。脇を固める大人のキャラクターたちにもそれぞれ思いがあり、その人間模様が丁寧に描かれている。特に僕はこの作品の登場人物でいうと親世代なので、この大人たちの姿がきちんと描かれているところにとても好感を持った。
和奏のお父さんは普段抜けているようで、娘の苦しみや思いをしっかりと受け止めて、優しくしっかりと見守っている様子が素敵だし、紗羽の僧侶のお父さんは娘と衝突して彼女の夢の実現の壁になるけれど、その根底にあるのは娘を心底大事に思っているからで、不器用パパっぷりがとても愛らしい。終盤で紗羽があれだけ対立していた父のことを「うちのお父さんは来るよ」と強い信頼を寄せるようになっていた何気ないシーンに思わず涙腺が緩んだ。

コンドルクインズの三人もとても粋だ。「その健やかなる時も病めるときも、喜びの時も悲しみの時も、私が造りたいのはそんな曲」というまひるの言葉を胸に、「音楽はいつもともにあるものだ」として歌い続ける彼らの歌に向かう姿勢と言葉が和奏や来夏をはじめ登場人物たちを大きく動かすきっかけになる。陽気でかっこいいじいさんたちの存在感が物語のスパイスとして良い味を出している。

大人たちの中で、高校生の五人に対置される形で裏の主人公となっているのが教頭・高倉直子先生だ。ルールに厳格でことあるごとに主人公たちと対立して彼らが前に進もうとするときに立ちはだかる。そんな彼女が抱えているのはかつての親友坂井まひるへの想いだ。

「全部ひとりでできてしまう」まひるへのコンプレックスにも似た複雑な思いと、それでも高校時代に一緒に過ごしともに曲を作った良き思い出、そして今も母校で声楽部の顧問として教鞭を取っている自分と、もう帰らぬ人となったまひるという立場の違いが、様々な思いを彼女の中に溜めこませているのだなということが、物語が進むにつれて次第に伝わってくるようになる。そしてその想いをきちんと昇華させて、教師として、音楽を愛する一個人として教え子たちに向き合っていくようになっていく過程が描かれていく。もう後半は彼女が出てくるだけでその一挙手一投足、台詞の一つ一つに心が動かされっぱなしだった。

これら大人たちの物語が、音楽を媒介にして、子供たちの物語と奏であうという構成が、作品の持つ魅力を充分に引き出しており、見応えが非常にある作品になっていると思う。

楽曲ももちろん素晴らしい。主演の高垣さんは音大声楽科出身でその歌唱力は折り紙つきだし、他のメンバーも全員抜群の歌唱力でとても綺麗な合唱曲を次々と歌っていく。また、劇中の様々な合唱曲については、平成二十四年度全日本合唱コンクール全国大会金賞受賞の千葉県立幕張総合高校合唱団が担当し、文字通り日本一の合唱を聞かせてくれるので、クオリティでいうなら随一だろう。「心の旋律」と「radiant melody」はともに甲乙つけがたいけど、クライマックスの後者の演奏はやっぱり思い出深いなぁ。

あとアニメファン的には早見沙織さんの「ハゲろ」「おたんこなす」など多彩な七色の罵倒セリフの応酬がですね、至高ですよね。ええ、わかりますよ。「もじもじしてキモイねー」は今年度紳士向け名台詞大賞であることは疑いない。

他、生足で乗馬している紗羽ちゃんは強靭な太腿の持ち主だと思ったり、美術部の水野さんが「花咲くいろは」に続いて登場してきたので、近いうちに水野さんを主人公にした美術部を舞台にしたPA WORKS製作青春アニメの予感を勝手にしていたり、あと、たびたび見せる、声楽部部長が痛い所突かれて目を見開いてうぇっ、って顔している時が何気にツボにはまっているのだけど、ちょっとニッチすぎるか。ああ、上野さんも良い子だなぁ。あ、校長の勇気と雇われの悲哀、胸に刻んだ。

ということで、TARI TARIは今年度を代表する傑作の一つだと思います。

関連サイト
アニメ「TARI TARI」公式サイト
TARI TARI [最新話無料] – ニコニコチャンネル
「TARI TARI」 | 【アニメ】はバンダイチャンネル
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TVアニメ TARI TARI ミュージックアルバム~歌ったり、奏でたり~
TVサントラ 宮本来夏(瀬戸麻沙美) 白浜坂高校合唱部 幕張総合高校合唱団 西之端ヒーローショウテンジャー AiRI 白浜坂高校生徒一同 白浜坂高校声楽部 コンドルクインズ 沖田紗羽(早見沙織)
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