「ティーパーティ運動の研究―アメリカ保守主義の変容」久保 文明+東京財団・現代アメリカプロジェクト 編著

米国政局を席巻するティーパーティ運動の現況について、10人の研究者の各々の切り口からの分析を集めた論集。現在進行中の運動であるだけに、体系的な分析は非常に困難であるため、概ね現在起きている現象や運動の実情がどのようなものであるか、というレポート的な内容になっている。

ティーパーティ運動とは何か、という根本的な問いについてもそれぞれの論者で認識に食い違いがあるし(例えばポピュリズム運動であるかそうでないか、等。僕は正しく現代ポピュリズム運動だと思うけれど。)、これで全部わかった!というような類のものでもないが、現状把握をするためには、目を通しておく価値が大いにあるだろうと思う。

これまで何度か同書から紹介してきたので、様々なトピックスについては本書やそれぞれの記事などを参照いただくとして、一応ティーパーティ運動の大まかな特徴としては、明確な政治目的下で組織された物ではない、中核的理念の不在、カリスマ的指導者の不在、統一的組織をもたない、自助努力・個人の自由・小さな政府など米国的価値観に根差している点で保守的運動の側面を持つ、雑多な思念・運動の集合体、オバマ政権成立を機に草の根運動として成立、ツイッターやフェイスブックの積極的活用、などが挙げられる。

さらに以下の点が挙げられる。(はじめに vi)

(1)政治の素人的であり、それをむしろ誇りに思っている。これは同時に強い専門家不信を持っていることも意味している。
(2)徹底的に小さな政府を追求する。ただし、宗教保守派との重なりも大きい。
(3)極端なまでに妥協を排する。
(4)基本的に内政に関心があり、国際関係に対する関心は強くないし、概して理解も弱い。
(5)国防費を聖域扱いしない議員が相当数含まれている。

政治の素人的というのは草の根運動的側面を、小さな政府の追求という面ではリバタリアン的、妥協の排除という点でポピュリズム的、国防費を聖域扱いしない点で非ネオコン的、ということなのだろう。また、カリスマ的指導者の不在という点でポピュリズム運動ではないという指摘もあるが、一方で多数のポピュリストに率いられた小さなポピュリズム運動の集合体としての側面もあるかもしれない。また、これに付け加えると、頑ななまでの護憲運動という側面も持つ。ティーパーティ運動の基本理念の一つである「憲法保守」については同書のChapter7で説明されている。

目次は以下の通り。

Chapter1 ティーパーティ運動を理解するためのフレームワーク
Chapter2 ティーパーティ運動とインスティテューションの崩壊
Chapter3 ティーパーティと分裂要因
Chapter4 ティーパーティ議員連盟とティーパーティ系議員の影響力
Chapter5 ティーパーティ運動の一つの背景
Chapter6 ティーパーティ運動がもたらす統治・公共政策における三つの混乱
Chapter7 ティーパーティ運動と「憲法保守」
Chapter8 ティーパーティ運動とソーシャルメディア
Chapter9 ティーパーティにおける女性とソーシャルメディアの関係
Chapter10 ティーパーティ運動とオバマ政権のテレコミュニケーション政策

ティーパーティ系候補者が予備選に強くて本選挙に弱い、とか、共和党大統領候補予備選で当初台風の目になっていたロン・ポールの政策や運動について、あるいはそのポール派をはじめとするリバタリアン系運動と文化保守系運動という二大潮流が分裂要因となっていく可能性について、あるいはミット・ロムニーの副大統領候補となったライアン氏の政策や彼が中核となっていたヤングガンズと呼ばれる共和党内グループの活動など、二〇一〇年代初頭の米国政局を把握する上で有用な内容になっていると思う。

次の中間選挙ぐらいまでがギリギリこの本の賞味期限かなぁと思うので、さらなるティーパーティ運動の研究書に期待したい。

本ブログで同書を参考に書いた記事は以下の通り。
グレイトフル・デッドにティーパーティ運動を学ぶ
反「大きな政府」連合としてのティーパーティ運動
ティーパーティ運動を分断するリバタリアニズムの化身ロン・ポール
ティーパーティ運動のキマイラ化を成し遂げた「憲法保守」概念
米国大統領選挙共和党副大統領候補ポール・ライアン氏について
ティーパーティ運動の米国政治への影響についてまとめ

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