六〇年代米軍による鳥類や昆虫を使った「生きている警報」実験

マルタン・モネスティエ「図説 動物兵士全書」によると、一九六〇年代初頭の米国で『鳥の生得的な能力を利用して、敵の存在や接近を遠くから探知することは可能か』を検証する研究が米国陸軍主導でパナマ領内の熱帯ジャングルに覆われたある島で行われたという。

結果から言うとこの研究は失敗に終わった。一部の鳥で『生理的なリズムの変化と鳴き声の周波数の変化によって、人間が存在していることをはっきりと示していた』(P31)が、わかるのは人間の存在だけで『通報された人間がただ前進しているのか、それとも罠をしかけるために活発に動き回っているのか判断できなかったし、人間が移動する方向も探知できなかった』(P31-32)ためであったからだ。結局鳥を使った「生きている警報」の実験は中止となった。

鳥に代わって試されたのが昆虫であった。『昆虫が獲物を見つけたときに発する音』を利用できるのではないか、ということで数十万種の昆虫の中から予備選抜されたのがシラミ、ノミ、ダニ、ナンキンムシ、数種類の蚊だったという。しかし、これもまた行き詰まりを見せる。

『実験の立案者の一人、ロバート・ビューローは、一連の実験の報告書である「戦争の動物たち」の中で、シラミはあまりに怠け者なので使いものにならず、ノミはあまりに食い意地がはっているので不適当であることがわかったと書いている。またダニはあまりに動きがにぶいので役に立たず、ナンキンムシはあまりに飛びはねるので「偽の警報」を発しかねないのだった。』(P36)

残った候補である蚊を使った、空気を送り込むことでその空気中に人間が発する香りがあればそれに反応して警報を鳴らす実験装置が作られたが、これもまた「偽の警報」となる可能性が大であったため、結局近くに人間を置かないですむような環境での実験に切替えられ、『不確実な敵を探すことでも、待ち伏せを探知することでもなく、限られた区域を侵入から守る』(P37)という方針で蚊については実験がなされることとなった。

さらにナンキンムシの中でも角のある大型のナンキンムシを使った実験も行われることとなった。ナンキンムシは五〇~八〇の聴覚受容器を特に触角の最後の二つの環節の中に持っている。そこで以下のような実験が行われた。

『アンテナのついた柔らかいペーストの磁極の上に昆虫を固定してから、実験者たちは二本の触覚のうち一本の聴覚受容器の根元に、直径数ミクロンのタングステン製の電極を取り付けた。人が近づくたびに、虫たちに神経的な興奮が起こり、それはオペレーターのモニターに、電気的にはっきり目に見える形でキャッチされた。』(P37)

さらにその興奮は人間の息によって起こることもわかり、研究が続けられた。軍事秘密のためこれらの実験の実験結果は詳細不明、また、その後なんらかの軍事作戦に活かされたかどうかも不明であるという。

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