「俺の妹がこんなに可愛いわけがない 第一期」感想

二期PV

「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」第一期、先日ニコニコ生放送の一挙配信で観ました。噂にたがわず面白かったです。

もっとベタベタに兄妹イチャイチャなノリかと思ったら、むしろ突っ走る妹を兄の目線からしっかりと守るという兄弟愛の方向で、そういう頼りがいのある兄の姿に、周りの女性も惹かれて行ってしまうという、筋道が通った気持ちいい恋愛コメディだったと思います。特にキャラクター一人一人がしっかりと魅力的に描かれているのが強いなぁ。そりゃみんな京介くんには惚れるだろっていう。

オタクカルチャーに夢中になる妹とそれを取り巻く周囲の人々という関係性で描かれていることから、オタク趣味に対する周囲の嫌悪感、それらと向かい合って関係性を構築していこうという行動など、現代社会でも身近なテーマが柱としてあり、シリアスとコメディとを上手くブレンドさせながら魅力的なお話になっていると思いました。

魅力的なキャラクター、身近なテーマ、おそらく読者の多くがリアルなものと感じているだろう関係性などでもって作品世界にぐいぐい引きずり込んでくれる反面、一気に突き放して来る場面がちょくちょくあって、ちょっと動揺させられることも少なく無かったです。

例えばR18の話。三話で桐乃のR18ゲームが両親に見つかり、それを京介が体を張って説得して最終的にぐだぐだながらも認めてもらう訳ですが、社会通念上で言うと、中学生の女の子がR18ゲームって確かにふさわしくないとされるものです。お父さんの言い分の方が遥かに理屈が通っています。

そこで、ぐいっと作品世界から現実世界に引き戻されるわけです。え?っと動揺します。で自身の社会通念と相談します。さらにレイティングってそもそもなんだっけと調べ始めます。基本ゲームのレイティングって自主規制で法的根拠は存在しない、一方で、社会通念としては慣習法のレベルにあると言っても過言では無いというもので、社会的には強制力があると認識されています。社会通念とは衝突する、しかし法的根拠があるわけではない、じゃぁ僕はどう考えるのか、そんな葛藤を抱きつつ、でも、物語世界だし、などと色々考えさせられることになる。

「アニメはアニメとして語ればいい、道徳とか政治とか思想とか持ち込むのはヤボだ」と思いますので、別に、だからこの作品はけしからん、などと言うつもりはありません。ポイントは、敢えて問題提起をするような、社会通念に挑戦的なテーマを入れることで、作品世界からぐいっと突き放してくるという点です。これかなり冒険だと思うんですよ。もう一度作品世界に没入できるかどうか、通過儀礼的な位置付けになりますから。勿論、これを重要だとは考えずに、そのままスルー出来る人も少なくないと思いますし、むしろ喝采をおくる人もいるだろうとも思います。

ただ、それをもう一度胸倉を掴んで作品世界に引き込むかのようなキャラクターたちの魅力というものがある。ああ、またこのキャラクターたちに会いたいな、これからどうなっていくのか見守りたいなと思わせる剛腕をこの作品は備えている。これは凄い利点だと思います。魅力あるキャラクターがいることこそが良いライトノベルやアニメの条件だとするなら、それを充分に満たしている。

最近、「純潔の近代―近代家族と親密性の比較社会学」という本を読んでいまして、この本は要するに、現代日本社会の「恋愛」がヴィクトリア朝時代の英国でピューリタニズムを背景として独自に発展した「ロマン主義的恋愛観(ロマンティック・ラブ・イデオロギー)」を輸入する形で日本で独自発展した観念だということを、欧米のそれと比較することで描いた比較文化・社会論の本です。

詳しくはまた別の記事で書くつもりですが、要点だけ言うとヴィクトリア朝道徳であるところの「純潔」が明治大正期の日本に輸入されると極端に男女交際の忌避感と女性の処女性の追求として現れることになる。精神的な「愛」の到達点として「結婚」が設定される一方で性愛としての「色」は忌避され、「清潔なる男女交際」を訴える言説が多く登場する。

この影響下で文学作品に共通して現われるようになるのが、第一に『男性=師、女性=弟子』(P43)という教養や学問を軸とした「教養型男女交際」の形、第二に、清潔な関係の追求の結果、女性が男性を兄のように慕うという『恋人同士の関係としてではなく、兄と妹のような関係として語られる』(P43)関係性で、性的関係を排除したプラトニックな恋愛として描かれるようになるというものです。

つまり、日本の文学史における恋愛関係の描かれ方の王道として兄と妹のような関係として男女交際の関係性を描くという手法が近代文学の登場とほぼ同時に生まれていたということです。

この作品でも兄と妹の恋愛には決してならないけれども、兄が妹を導く師弟関係的な関係性とともに、妹がツンデレだけど兄を慕う関係性とが描かれていて、恋愛関係としては全く描いていないにも関わらず、確かにどこか恋愛を想像させるものがあると思います。黒猫が京介を見る目も妹が兄を慕うような態度ですし。

リアルでの兄妹愛というのはまず間違いなく想像しにくい、というか想像不可能ですが、創作世界では兄妹の疑似恋愛が一大ジャンルを築いているのは、たぶんこのような日本文学史で脈々と受け継がれた兄妹的恋愛関係モデルという背景があったのだろうと思ったという話です。つまり北村透谷が悪い、いや偉いのか。

ということで「俺妹」二期を見る準備は整ったので、楽しみに観て行きたいと思います。地味子さえ幸せになってくれればいいんだおれは。あとバジーナさんの思わず涙がこぼれるほどの包容力、至高のはやみんボイスによるあやせの罵倒、桐乃のオタ顔、黒猫の中二病トーク、京介兄貴の男気などなど、そして何より親父のデレを思う存分堪能したいです。

関連サイト
「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」一期公式サイト
「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」二期公式サイト
俺の妹がこんなに可愛いわけがない。」(二期)ニコニコ動画配信ページ

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