アフガニスタンでの女性教育を命懸けで進める女性のTEDスピーチ動画

シャバナ・バシージ=ラサ「アフガンの少女に教育を」 | Video on TED.com

女性教育を徹底して禁じたタリバーン政権下でリベラルな家族の命懸けの支援を受けて秘密学校に通い、米国の難関ミドルバリー大学を卒業、今なお内戦下にあるアフガニスタンで女性教育を推進する民間機関” SOLA (School of Leadership, Afghanistan)”を創設・女子学校を運営するシャバナ・バシージ=ラサさんのTEDスピーチ動画。とても感銘を受けた。

動画の背景としてタリバーンは何故女子教育を禁じたのか?について簡単に概要だけ補足しておくと、タリバーンを始めとした現代的なイスラーム復興運動においては現在直面する危機はイスラームの正しい教えを人々が理解していない、または実践されていないからだと考える。特にアフガニスタンは1960年代に議会開設・教育改革など急速な近代化を進め社会も西洋化が進んだが、その後90年代にかけては政治と社会の混乱からソ連による侵攻を招き、ソ連撤退後はイスラーム勢力同士の内戦と常に世界でもトップクラスの危機にあった。そのような中で90年代半ばに台頭したタリバーンにとってアフガニスタン混乱の元凶は近代化と人々の非イスラム的行動であった。戒律を忘れ、宗教的な生活を送ることもせず、西洋的生活様式を導入し、家庭を守るべき女性が教育を受け社会進出を果たす。これこそが延々と続く血で血を洗う悲劇の根源であり、平和な社会の建設のために断固として止めるべきだと考える。タリバーンとは探求者の意味で、急進的な一派であるデオバンド派のマドラサ(神学校)に通う若い学生たちが中心メンバーであった。ゆえにその”崇高な理想”のために厳しく女性たちの教育を禁じ、弾圧した。

ソ連傀儡の強圧的な共産党政権や腐敗して党利党略しか考えないイスラーム諸派の内戦に辟易していた人々は当初は彗星のごとく現れた清新なタリバーンを支持したが、その急進的な復古主義はすでに60年代以降の近代化政策を受けてリベラルな気風を身に着けていた人々にとってはたまったものではなく、動画で語られるシャバナ・バシージ=ラサさんの御両親もそのような人々の中の一人だったのだろう。常にタリバーンの弾圧の恐怖に怯えながら学校に通うことに挫けそうになった彼女に語ったお父さんの言葉は非常に胸を打つ。

『いいかいよく聞きなさい。人間は大切なものをすべて失うことがある。お金を盗まれたり、戦争によって故郷を離れなければならないこともある。でも唯一何があっても失うことがないもの、それはお前の”ここ”にあるんだよ。だからもしお前の授業料を払うためならお父さんたちは自分の血を売ったっていい。どうだいそれでもまだ止めたいかい?』

ニュースなどでも報じられるとおり、タリバーン政権崩壊後の現在でも女学生への攻撃や私刑は頻繁に行われているし、バシージ=ラサさんが懸念している通り、アメリカ軍(国際治安部隊:ISAF)撤退後は、腐敗した現統治体制の脆弱さもあって一層苛烈化しそうでもある。アフガニスタンについては、かつてゴルバチョフが無責任に放り投げたように、オバマも結局糸口を見出さないまま撤退だけを進めそうな懸念が強くあって、動画を見ながら彼女の勇気ある試みに感銘を受けつつも行く末がどうなるのか、非常に心配な気持ちにさせられた。アメリカは勿論だけど、当時「テロとの戦い」の名の下にアフガニスタン侵攻を承認した国際社会はアフガニスタン戦争の出口戦略を再びよく討議してより積極的にコミットしないといけない、と思う。気付くと国際世論はどこへやら、アフガニスタン問題はアメリカ一国の問題になってしまっていますが。

そんな中で、このスピーチは教育を受けることさえも命の危険を感じさせられるアフガニスタンの現状、その中で勇気をもって自身の問題として取り組む人々、また教育を受けることの意義をきちんと再確認させられる内容でとても素晴らしい動画だと思った。日本でも教育を巡っては様々な難問が山積しているけれど、だからこそ、見る価値のある動画ではないかと思うので、簡単に紹介しておく。

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