三上 延 著「ビブリア古書堂の事件手帖シリーズ1~4巻」感想

ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~ (メディアワークス文庫)
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ビブリア古書堂の事件手帖2 ~栞子さんと謎めく日常~ (メディアワークス文庫)
ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)
ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)

人並み外れた洞察力と推理力と博覧強記の古書知識を持った若き女性古書店主篠川栞子が、古書と古書に関る人々の謎を解きあかしていくミステリーシリーズです。今相当売れているようで、舞台が近くの鎌倉一帯ということもあり以前から読みたいと思っていたのですが、最近になってやっと最新4巻まで一気読みしました。あらすじと主要登場人物にまつわるエピソードは若干言及していますが、犯人や本筋となる謎解きについてのネタバレは無いです。

第一巻はどちらかというとミステリーの謎解きが人間模様を描くというよりは、謎解きによってプロットを説明する傾向が強くミステリーにお話が引き摺られている印象だったのですが、二巻、三巻と巻を追うごとに洗練されて行き、古書にまつわる謎が明らかになっていくことで取り巻く人々の思惑と人生を立体的に浮かび上がらせるシリーズになっています。

シリーズが一気に深みのある物語へと転換した印象を受けたのはやはり二巻二話『福田定一「名言随筆 サラリーマン」(六月社)』でしょうか。章題の作品とは別に司馬遼太郎の著作がいくつか取り上げられているのですが、その中の一つ、司馬遼太郎幻の推理小説「豚と薔薇」の司馬遼太郎のあとがきの引用が多分、この作品を一気に変えたのだろうと思います。一応の孫引きをすると

『私は、探偵小説に登場してくる探偵役を、決して好きではない。他人の秘事を、なぜあれほどの執拗さであばきたてねばならないのか、その情熱の根源がわからない。それらの探偵たちの変質的な詮索癖こそ、小説のテーマであり、もしくは、精神病学の研究対象ではないかとさえおもつている。』(「ビブリア古書堂の事件手帖2 ~栞子さんと謎めく日常~」P133)

この司馬への回答、あるいは反論を模索するかのように、他人の秘事を執拗にあばきたてることの意味を、その情熱の根源を、探偵の変質的な詮索癖を、著者は作品シリーズを通して描こうとしているように思えます。推理小説を否定する司馬への挑戦、というのはやはりミステリー小説家にとっての情熱の根源たりえるのだろうか。

一、二巻ではまだ暗中模索な印象だったのが、三巻で一気に何か突破口を見つけたように面白さが段違いにレベルアップしていき、四巻では江戸川乱歩と言う巨人と正面から向き合って、乱歩にオマージュを捧げつつミステリーとドラマとエンターテイメントとを見事に融合させ、鮮やかに伏線を回収し謎解きの面白さと複雑な人間模様を浮き彫りにして読み応えあった。一、二巻も充分な面白さだけど、三巻から四巻にかけては本当に面白い。

完成度でいえば、やはり三巻三話「宮澤賢治『春と修羅』(関根書店)」が一番手で、愛すべき佳作として三巻二話「『タヌキとワニと犬が出てくる、絵本みたいなの』」と一巻三話「ヴィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)」の坂口夫妻もの、三巻以降を読み進めていくことでみるみると輝きを放っていくのが二巻三話「足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房)」、また、初期の話も四巻のエピローグまで読むことで伏線として機能してたことが明らかになったりしますね。前述したターニングポイントとしての二巻二話『福田定一「名言随筆 サラリーマン」(六月社)』も切なくてしかし救いのある良エピソードだと思う。

あと志田さんは中年男性の夢を一身に具現化したキャラで、すばらしいすね。せどりで糊口をしのぐホームレスの偏屈な書籍オタクの中年男性が助けた女子高生に・・・って、それなんてエ(以下略)。どこで買えますか。

丁度四巻で一巻からの伏線が概ね回収され人間模様が一定の収束点へとまとまり、シリーズとして一段落するので一気読みするのにおすすめ。

今後の展開としては、抜群の推理で難事件を解決する栞子さんが、果たして自身の問題も同様の冷静さで解決することが出来るのか、当然曲者の母智恵子との関係に焦点が当たっていくのだろうと思いますが、自身が向き合いたくない秘事すら、自身の手によってあばくことができるのか、その情熱の根源へと迫っていく様を描くことができるのか、というあたりに期待したいです。

栞子さんの本棚  ビブリア古書堂セレクトブック (角川文庫)
夏目 漱石 アンナ・カヴァン 小山 清 梶山 季之 坂口 三千代 アーシュラ・K・ル・グイン F・W・クロフツ 宮沢 賢治 ロバート・F・ヤング 国枝 史郎 太宰 治 フォークナー
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