「嫌悪感」が政治的・道徳的信条に及ぼす影響についてのTED動画

デイヴィッド・ピザロ: 嫌悪感による奇妙な政治学 | Video on TED.com

TEDで興味深いスピーチ動画を見た。人が感じる生理的嫌悪感と道徳的・政治的保守化傾向との関係についての心理学者のスピーチだ。動画中のプレゼンでは嫌悪感を起こすため糞便・化膿した傷口・山盛りの虫の写真、またマイノリティに対するヘイトの例が登場するので要注意。

主に米国での実験結果だが、様々な実験の結果、嫌悪感に対する耐性が低い人は概ね道徳的・政治的に保守的な意見を持ち、保守的傾向の人びとは総じて気分を害されやすい。また、生理的嫌悪感を感じた状況では人は道徳的・政治的な問題について保守的な見解になる傾向が強まるというものである。

もちろん、これは実験の過程で、汚染や毒の摂取などから身を守る機能である「嫌悪感」が政治的・道徳的な思想傾向に少なからず影響を与えることに、なんらかの相関関係がありそうだと示されているに過ぎず、スピーチ中でもあるように、『科学的方法はこの種の疑問に答えるには不十分である』(動画13分44秒~より)。

動画中にも示されているように、生理的嫌悪感を引き起こす様々な言葉がユダヤ人、性的マイノリティ、不可触民、少数民族などと結び付けられてスローガンとして用いられることで、差別を加速してきた歴史的事実もあり、人間が感情の動物である限りにおいて必然的に抱く嫌悪感と、政治的・道徳的信条とを、自分自身が無意識に結び付けて考えてしまっているかもしれない、ということに注意を向けておくにこしたことは無いだろうと思う。

このあたり、保守とリベラルとの違いや自身の所属を明確に自覚している人が大多数の米国の実験例であるので、その認識や境界が曖昧で、米国の両勢力とはその内実が大きくかけ離れている日本に当てはめて考えることは出来ないし、また、これをもって日本の保守は、リベラルはと語るのは、いわゆる「嫌悪感と政治的・道徳的信条とを結び付けて考える例」の最たるものとなるだろう、ということは非常に蛇足ながら書いておく必要があるか。動画中でもリベラル派が大多数のTEDの聴衆へのリップサービス的なコメントをしていたりもするが。

日本だとケガレの慣習が、地域や文化圏によってその強弱はあれど長く影響を及ぼしていたりするし、他の海外の様々な地域でも生理的嫌悪感と社会集団とを結び付けての道徳観の強化によって、差別が制度化されている例(カーストなど)も数えきれないほどあるし、嫌悪感が政治的・道徳的信条に及ぼす影響については、このスピーチ以上のまとまった論文や書籍があれば読んでみたいと思う。

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