人は何故虚偽の記憶を作りだすのかについてのTED動画

エリザベス・ロフタス: 記憶が語るフィクション

虚偽記憶の研究者エリザベス・ロフタス氏によるTEDスピーチ動画がとても面白かった。冒頭で紹介されるのは悲劇的な冤罪事件のエピソードだ。日本でもよくある、本人は否認しながら目撃者の曖昧な証言によって有罪になり刑務所に投獄されるが、のちに真犯人が判明して釈放、しかし全てを失い警察と司法を相手取って裁判を起こすが、その裁判の過程で名誉が回復されることなく非業の死を遂げる。

ロフタス氏は他の冤罪事件も含めた300件の事例の四分の三が目撃者の曖昧な虚偽の記憶によって有罪とさせられた統計を示し、多くの人びとは人間の記憶を記録装置と思っているが、実は組みたてられ再構成されるもので、ウィキペディアのような「自ら内容を書き換えることもできれば、他人が書き換えることもできる」ものだと指摘する。

様々な虚偽記憶の実験例が紹介されるが、結論としては虚偽の記憶を見破る方法は無く、一つ一つ実証していくことが必要だという。裁判と冤罪、トラウマや心理療法などから、虚偽記憶を植え付けることや虚偽記憶の研究そのものの倫理性についても話題が及ぶのでなかなか聞きごたえがある。少なくとも司法の歴史では人間の記憶の曖昧さについてはすでに十八世紀には疑義が呈されて、自白や証言のみに頼らない制度構築が訴えられ続けてきた。

ところで、同氏のことは存じ上げなかったが、日本語訳されている専門書もいくつかあるようなので、今度読んでみる。僕も虚偽かもしれない記憶は自覚的なものとそうでないものと数えきれないほどあるしなぁ。結局、僕が漠然と感じる自分の記憶への不信が、物事を徹底的にというか、執拗に調べる傾向を生んでいるのは否めないし、さらに言えば過去は積み重ならず流れ去るだけというようなどこか刹那的な人生観にも結び付いているんだよなぁ、などとスピーチを観て再認識している。

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