銀河英雄伝説再アニメ化ということで元ネタっぽい歴史上の戦争いくつか

名将たちにまた会える! 「銀河英雄伝説」再アニメ化決定 – ねとらぼ

往年の人気SF小説「銀河英雄伝説」が再アニメ化だそうで、原作は中高生のころに繰り返し夢中で読んだので色々思い出深い。小学生のころから歴史読本を買ってもらって大喜びする変な子ではあったが、あきらかに僕の歴史好きに拍車をかけたのが「銀英伝」なのは間違いない所だ。

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実は旧アニメは最初の数話しか見ていないのだが、その豪華キャストから銀河声優伝説の別名もあるようで、現代のアニメーション技術と声優・スタッフ陣でどのような大作が作られるのか楽しみにしたい。とりあえずアニメ化と聞いていの一番にアンドリュー・フォーク=C.V.子安武人さんを余裕で想像した。あとアンネローゼは大原さやかさんよな。

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アスターテ会戦とナポレオン、他各個撃破

「銀英伝」が古今東西の歴史上の戦争をモチーフにしていることは有名な話で、例えば一巻冒頭のアスターテ会戦は1796年4月に行われたナポレオンのガルダ湖畔の戦いが元ネタではないかと言われているようだ。

1796年4月、ナポレオン率いるフランス軍3万はイタリア遠征の途上、オーストリア軍1万が籠るマントバ要塞を包囲、とそこに後背からオーストリア軍の増援部隊5万が迫ってきていた。6万vs3万と二倍の兵力で囲まれる格好になったフランス軍だが、ナポレオンは敵増援部隊が、主力中央軍25000、右翼20000、左翼5000で、相互に地形に阻まれて、実質孤立した状態にあることを見てとり、機動力を生かして各個撃破に出る。

まずナポレオンは墺右翼軍を急襲、油断していた墺軍は潰走する。続いて仏軍の墺右翼軍への攻撃に気付いた墺中央軍が友軍の援護に向かうが、墺中央軍は待ち構えていた仏軍によって死傷者二万を出して壊滅させられる。戦史上も鮮やかに各個撃破が決まった代表的な戦いの一つのようだ。

包囲殲滅しようとしたはずが各個撃破されるというパターンは戦史上よくある。三十年戦争の初戦、ボヘミア・プファルツ戦争で神聖ローマ皇帝フェルディナント2世に反旗を翻したボヘミア王・プファルツ選帝侯フリードリヒ5世の鎮圧に向かった帝国軍総司令官ティリー伯は、集結して帝国軍の包囲殲滅にかかろうとするフリードリヒ軍が川に挟まれて孤立している状況を見て各個撃破に乗り出す。帝国軍の数は不明だが、フリードリヒ軍はバーデン辺境伯軍11000、ブラウンシュバイク(!)公弟軍15000、傭兵部隊マンスフェルト軍10000で、まず渡河しようとするバーデン軍を足止めしたあと、ブラウンシュバイク軍に2000の損害を与えて戦闘不能にし、その様子を見た元から戦意が高くなかったマンスフェルト軍が撤退、渡河してきたバーデン軍を壊滅させた。

ティリー伯は以後も連戦連勝、グスタフ2世アドルフやヴァレンシュタインなどに知名度は劣るかもしれないが、三十年戦争屈指の名将として知られる。個人的には三十年戦争でも一番好き。すでに60代のたたき上げの将軍で謹厳実直な人柄で知られ、銀英伝でいうとメルカッツを彷彿とさせる老将だった。グスタフ2世アドルフとティリー伯、文字通り常勝と不敗の決戦となった「ブライテンフェルト会戦」は中世の戦術の主流だった密集陣形テルシオを大砲・マスケット銃部隊を中心とした機動力・攻撃力のある旅団で撃破した欧州戦術史の画期として名高い。

ヤン・ウェンリーと文禄・慶長の役の李舜臣

七巻のヤン・ウェンリー一味が少数艦隊で帝国軍を翻弄していく展開はたぶん文禄・慶長の役ではないかと思う。

天下一統を成し遂げた秀吉は1592年、李氏朝鮮への侵略戦争を開始した。

小西行長率いる700隻18,000名の将兵を乗せた第一陣に続いて加藤清正、黒田長政ら五万の大軍勢が次々と侵攻する。朝鮮側の水軍は慶尚道と全羅道とに指揮が二分されさらにそれぞれ左艦隊と右艦隊があるという状態で統一した軍制が確立されておらず、対馬海峡側を司る慶尚道水軍は大軍勢の前に壊滅、上陸を許した。初戦の大勝利に油断した豊臣軍は朝鮮側の残存艦隊も沿岸警備程度しかないと判断し、海上の防備をおろそかにしたまま、次々と奥地に侵攻していく。

全羅道左艦隊の李舜臣提督はこの機を逃さず60隻の艦隊で出撃、まずは5月7日、藤堂高虎・堀内氏善率いる30隻を撃滅(「玉浦沖の海戦」)すると、翌日の「合浦・赤珍浦の海戦」で11隻、5月29日には新型艦亀甲船三隻を含む26隻を率いて「泗川沖の海戦」で12隻、以後6月7日までに54隻を沈めるなど各個撃破していった。この間李艦隊にはほぼ損害は無い。

7月8日、李艦隊撃破のため集結した脇坂安治率いる70余隻を巧みに誘い出して「閑山島沖の海戦」で撃滅、この戦いは脇坂艦隊に攻撃させ、機を見て逃走、追撃する脇坂艦隊を狭隘な閑山島沖に誘い込み集中砲火を浴びせて包囲殲滅するという鮮やかなもので、脇坂艦隊70余隻中59隻もの艦船が海の藻屑と消えた。続く「安骨浦の海戦」でも水軍の将として知られる九鬼嘉隆艦隊を壊滅させる。日本は大艦隊を整えながら、艦隊を分散させたことで次々と各個撃破され、侵攻部隊は補給路を断たれ停戦交渉に入ることになる。

豊臣軍撃退の立役者となった李舜臣は英雄としてもてはやされそうだが、国内の政争に巻き込まれて反逆容疑で査問を受け、解任されてしまう。その間に日本と明の停戦交渉は難航、ついに再戦となり朝鮮艦隊が日本艦隊に壊滅させられると、慌てた李朝政府は李舜臣を復権させ朝鮮水軍総司令官につけた。ただし、このとき残っていた朝鮮水軍はわずか13隻であった。この13隻で再び日本艦隊を次々と撃破し、業を煮やした秀吉は藤堂高虎、脇坂安治らに100隻を与えて李艦隊撃破を命じるが、於蘭浦の水道に巧み誘い込まれ、逆流する潮に巻き込まれて混乱する中で集中砲火を浴びて31隻を失う大敗を喫する。

この13隻での奮戦に明が500隻の援軍を派遣、1597年11月18日、島津義弘率いる300隻の日本主力艦隊と狭隘な露梁海峡で熾烈な砲撃戦が展開された(「露梁の海戦」)。最終的に島津艦隊は250隻を失う大敗を喫するが、乱戦の中で李舜臣も戦死する。結局豊臣軍は制海権を確保できないまま、補給路を断たれて孤立する侵攻部隊は命からがらの撤退戦を経て、秀吉の死によって終戦となった。この戦後処理・国際的孤立からの脱却が後継となった徳川政権の外交上の最重要課題であったことは以前書いた通り(参考「江戸幕府を震撼させた国書偽造スキャンダル「柳川一件」の顛末」)。

戦国時代ファンならだれでもご存知のキラ星のごとき武将たちが次々と翻弄される様子は、やはり面白い。藤堂高虎あたりがワーレン提督よろしく「13隻!わずか13隻で我が軍を翻弄している!」と叫んだり、李軍の参謀が「うちの艦隊は逃げる演技ばかり巧くなって」とぼやいたりした・・・かどうかは知らないが。

まぁ、細かい戦闘の戦術はそれぞれ大きく違うようなので、あと秀吉は金髪の孺子ではなくサル顔のおっさんだけど、基本的な展開だけモチーフにしたという感じだと思う。寡兵で大軍を翻弄とか、戦争中にも関らず有能な前線司令官が政争に巻き込まれて失脚し戦争も劣勢(アメリカ独立戦争時の英国軍)に、とか戦争中勝利を得ながら司令官は戦死(トラファルガー海戦のネルソン、リュッツェン会戦のグスタフ2世アドルフ)とか、よくあるあるあるので。

ナポレオン時代を中心に世界史上の様々な戦争・政局をモチーフにして描かれているようなので、歴史に興味を持っていろいろ調べていく良いきっかけになる作品だと思う。

参考書籍・サイト
銀河英雄伝説の戦役 – Wikipedia
ナポレオン戦記Ⅰ  ガルダ湖畔の戦い1796年
ナポレオン

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