北朝鮮からの脱出に成功した女性のTEDスピーチ

イ・ヒョンソ : 北朝鮮からの脱出 | Video on TED.com

北朝鮮からの脱北に成功した女性のTEDスピーチ。語られぬ内容はとても衝撃的で生々しく、そして非常に心突き動かされるものがある。その脱出の過程については語られない部分が多いが、それは後に続く人たちや脱北支援をしている組織等を考えれば当然の配慮だろう。スピーチを聴いていても非常に幸運に幸運が重なって、ご本人も言っているように「奇跡」があって初めて成功していることがわかるし、さらに、脱出後の苛酷な人生とそれを切り開くための並々ならぬ努力の様も伝わってきて、敬服させられる。脱北者を探し出して北朝鮮への強制送還を止めない中国当局が問題だなぁ。

参考までに北朝鮮からの脱北者数の推移について、North Korean defectors(英語版wikipedia)からグラフを紹介しておこう。

脱北者数の推移

2000年代に入って脱北者は急激に増加しているようだ。この要因が脱北を試みる母数の増加によるのか、脱北を成功させる何らかの手法の確立なのかはよくわからないが、おそらく両方なのだろうか。

昨年7月のニュース記事「「脱北女性」が明かす驚くべき真実 | web R25」によると「世界的な注目を集めている」そうだが、動画のURLで検索しても、これまで日本ではほとんど注目を集めてきていないようだ。しかし、これはぜひ多くの人に見てもらいたいと思うので、ささやかながらブログで紹介しておこう、という記事。

例えとして適切かどうかわからないが、戦前の悪徳工場から脱出した女工や遊郭から脱出した娼妓を思い出した。一応過去の記事をあわせて紹介しておく。
暗黒企業の原初形態~明治の女工の地獄について
大正末期の無名の娼妓の手記と近代公娼制度について
自由は無く希望も無く隷従的で、かつ社会全体に幾重にも張り巡らされた脱出を許さないシステム、というのはどのように形成されて、どこにほころびが現れて、どのようにすれば解体させられるのだろうか。

同じく以前「「ヒトラーを支持したドイツ国民」ロバート・ジェラテリー 著」で紹介した同書によると、ナチス政権の独裁体制を揺るぎないものとしたのは、密告制度が社会の連帯を分断したからだという。

『不服従の表現の「唯一絶対条件」は「社会・文化空間」が存在して、それが多かれ少なかれ保護された飛び地を提供し、そのなかで、不満をもち、抑圧を受けた集団が会合し、議論し、動員し、行動する場所があることだ。多くの一般市民が、警察の目となり耳となったのだから、抵抗できた人々は、組織し、連帯を結ぶために集うことができなかった。それでも「ノー」をいいたかった人びとは、流れに逆らわなければならなかった。彼らは、個人的に不信を示す行為に駆られたが、それは、道徳人としての彼らには重要でも、独裁制にとっては少しも脅威ではなかった。』(P314)

上記で紹介した戦前の女工・娼妓も社会から断絶され、金銭的に縛られ、密告と相互監視の下、もし脱出しても警察の追跡で連れ戻されていた。社会の中の「保護された飛び地」の分断と不在が、隣国から見る限りにおいて最悪の体制としか見えない北朝鮮を存続させているのかもしれない。

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