中国とロシアの善隣外交「便宜上の枢軸」

最近、やたらと周辺諸国に物騒な火種をまき散らしているロシアと中国だが、ドミートリー・トレーニン 著「ロシア新戦略――ユーラシアの大変動を読み解く」によると、両国の間には目立った紛争も無く、非常に良好な善隣外交が続けられているのだという。両国の関係を「便宜上の枢軸」と呼ぶ人もいるそうだ。

『中ロ関係における際立った特徴は、境界の所在がはっきりしているという点である。パートナーだが同盟ではない。武器は売るが戦略対話はしない。一緒に何かをするが、結束して誰かに対抗するということはしない。同意しなくても一向に構わないが、ただし礼儀は尽くさねばならない。経済交流はするが経済統合はしない。移民も受け入れるが中国人街はつくらない。人的な交流はあるが、明白かつ動かしがたい文明的断絶が横たわっている。
これは良好かつユニークな関係である。それが続く限りにおいては、中露両国の指導者、ビジネスマン、一般国民の肌にあっているのだ。』(P233)

ああ、これは両国擬人化でのカップル妄想が捗(以下略

中国にとっては戦略目標は第一・第二列島線を設定しての東シナ海から太平洋にかけての海洋資源の確保と極東地域からの米国の影響力の排除であり、ロシアにとってはコーカサスの安定化と中央アジアのエネルギー資源確保、CIS諸国への影響力保持だから、戦略的な利害が一致するだけでなく急成長を遂げる中国にとって、ロシアは不足しがちなエネルギーの最大の供給元でもある。唯一中央アジアが両国の利害がバッティングするが、中央アジアへの進出では『北京はロシアの感情を害さないように振る舞った』(同書P232)

一方で、蜜月が続く中露関係の将来的なリスク要因は朝鮮半島で、ロシアは極東アジアに対しては善隣外交、経済関係の拡大が基本方針だから特に韓国との経済関係の拡大に努めてきた。ロシアと韓国の経済関係の拡大の背景には日本との北方領土問題がある。ロシアは中国だけでなく日本・韓国をはじめとした太平洋沿岸諸国を石油・天然ガスの主要輸出先として重視しているが、日本とは領土問題が解決していないため経済関係は限定的で、対日関係の制約から韓国との関係を重視するようになったものだ。しかし、朝鮮半島有事や朝鮮半島統一後の米国の影響力を巡る対立等々で、朝鮮半島を巡って米中関係がより先鋭化した場合、中ロ関係も難しい状況におかれる可能性がある。

これらを踏まえて考えてみると、たぶん朝鮮半島を巡って米中対立となった場合には、中国・韓国との友好関係を重視し、極東アジアの安定化が国益となるロシアがキャスティングボートを握って調停役として振る舞うということになるのだろう。ロシアは旧ソ連諸国への影響力を巡ってはアメリカと対立関係になることも辞さないが、極東・太平洋沿岸諸国に対しては経済関係の拡大が目標なので紛争はもちろん望まない。中国が極東アジア・太平洋沿岸諸国に対して政治的軍事的影響力の拡大・海洋資源の確保・アメリカの影響力の排除が戦略目標なのと大きな違いがある。冒頭に紹介した「便宜上の枢軸」の原則「一緒に何かをするが、結束して誰かに対抗するということはしない」を守ることになるだろう。

そうなった場合、日本は自国にも大きく影響を及ぼす事態であるにも関わらず蚊帳の外におかれて流されるがままになりそう。日ロ関係、日韓関係を早いうちになんとかしないと、中国の覇権主義・米中対立の構図が今後も続きそうな情勢の中、外交上の影響力は今後も下がる一方なんじゃないかなぁ。蚊帳の外からの「そろそろまぜろよ」(池田ァ!)な華麗な展開を望みたいところ。

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