「All You Need Is Kill」桜坂 洋 著

作品世界へゆっくりと、しかし着実に没入していくその過程は、良質な小説を読むときの魅力的な読書体験だ。本を手に取り、ページを開いて、文字を追い、少しずつ、少しずつ入り込んでいく。鬱蒼と生い繁る常緑樹の間を抜ける神社の参道を歩いていく心地よさとときめきにも似た体験だ。しかし、その没入が即座になされる作品も少なくない。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。」(川端康成「雪国」)という一文によって脳裏に鮮明に浮かぶ雪景色にしろ、「廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お齒ぐろ溝に燈火うつる三階の騷ぎも手に取る如く、明けくれなしの車の行來にはかり知られぬ全盛をうらなひて・・・」(樋口一葉「たけくらべ」)という冒頭を目にしたときに広がる下町の街並みにしろ、その没入体験は一瞬である。

本作もまた、最初の一ページ目から作品世界にいざなって・・・否、放りこんでくれる。そこは血と硝煙、兵士たちが容赦なく肉塊に変わっていく、生きるか死ぬかの戦場だ。

人類を攻撃する謎の生命体ギタイとの殲滅戦の最前線に投入された新兵の主人公キリヤ・ケイジ、新兵もベテランも容赦なく死んでいく絶望的な状況下で彼は・・・一瞬で戦死した、ジ・エンド、とはならない。戦死したはずが、その体験の記憶だけを残しつつ、出撃一日前に目覚める。死と絶望という体験を何度繰り返しても、同じ、また目覚める。

死と絶望のループという極限状態はいつ終わるのか、何故終わらないのか、最初の一ページ目から作品世界に没入させてくれるやいなや、怒涛の勢いでその一筋の希望すら見えない袋小路に追い込んでくれて、本当にドキドキさせられた。

ギタイ誕生の経緯はちょっと唐突感があったので説明しなくてもいいんじゃないかと思ったりもしたけれど、ギタイの絶望的な強さにしろ、作品世界の設定にしろ、主要登場人物の描写にしろ丁寧に作られていて、伏線回収の巧みさには色々唸らされるし、ラストバトルは熱いし、と申し分無い。

ジャパンのレストランで食後に出されるグリーン・ティーは”帰れ”の合図ってリタに教えてうんざりした顔をさせたい。

本作の映画化にも期待している。まさかトム・クルーズ主演とはね。予告を見る限り映画ではトレーニングはフェレウ軍曹じゃなくリタが行うっぽいのと、ハンドアクス使っているのははリタだけっぽい?また、imdbのキャスト表を見る限り男性俳優ノア・テイラーが演じるDr. Carterがメガネっ子技術者シャスタちゃんポジションかな。あと記者のラルフ・マードック結構好きなんだが、映画の方はBBC,CNN記者のモブがいる以外それっぽいキャストは見かけないのが残念っぽい。ぽいぽい。エロ本片手に瞬殺されてたニジョーさんは出るのか問題・・・はどうでもいいか。

7月4日公開!映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』公式サイト

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