神話学とは何か

神話学とは何か (有斐閣新書)
吉田 敦彦 松村 一男
有斐閣
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神話学はほんの30年足らずで捉え方が180度がらりと変わってしまう程変化の激しい学問なのだそうですが、1987年刊行のこの本は出版から20年経った今でも、とても読み応えのある本でした。いや、今だからこそその価値を増していると言えるかもしれません。
そのタイトルどおり神話学について定義から詳細な学説までを概説した本です。
神話学とは何か、その答えはシンプルで神話についての学問です。
では、神話とは何か、その定義についてこう書かれています。

世界や人間や文化の起源を語り、そうすることによって今の世界のあり方を基礎づけ、人々には生き方のモデルを提供する神聖な物語

合理性や科学を重視する現代社会において、神話は虚構だと考えられ神話vs科学の対立図式で捉えられがちです。
しかし、人は

合理的・科学的な思考のみで生きているのではなく、なんらかの形で理解や分析を超越する存在に最終的なよりどころを求めている。つまり人間には人生に意味と価値を与える何かが必要

なのだと本書では書かれています。
まさにその通りだと思いました。
例えば、「人は何故生きているのか」という命題に答えるときに科学的な回答?「呼吸をする」「栄養素を体内に取り込みエネルギーに変換して活動する」「生殖し子孫を残すために」・・・などでは回答の半分ですらないように思うのです。
人生の価値や意味を人間の持つ非合理的な側面が信じられる物語があって初めて回答たり得るのではないかと思います。その回答は主観的であって良い、というか主観的であるべきだと思います。
同様に人は何故死ぬのかとか、日本人らしさとは何かとか、あるいは暗闇は何故怖いのかとかそういった感情や非合理的な疑念に対する回答としての主観的な神話=物語は個々人或いは一定の規模の集団がそれぞれ持つべきなのだと思います。
日本人であれば日本のこれまでの歴史や文化、思想、宗教などを振り返りつつ日本に住む個人や集団としての物語を構築してこそ自己の安定に繋がるし、それが家族で共有できる物語であれば家族の安定に、さらに社会や地域、組織など各々で物語が構築されていくことでその集団で生きる価値や意味が見出せていくのだろうと思います。(※意図的に神話と物語とアイデンティティをニアリーイコールで語っています。厳密にはかつての神話が持つ機能のうちの物語性こそ今重要だと思っていて、アイデンティティとしての物語という側面を重視したいと考えています。)
神は死んだではないけど神話のもつ物語性の喪失という現状があるのではないかということを僕自身真摯に向き合わなければならないと思っている今日この頃です。
僕自身が信じることの出来る物語とは何か。という問いを自分に投げかけてみる。主観的な答えを探している過程なのです。
・・・本の内容からすっかり脱線していますが、神話とは何か、という大きな概説の部分からさらに突っ込んでデュメジルの三機能説、レヴィ=ストロースの構造分析、イェンゼンのハイヌウェレ神話の研究、ユングの深層心理的アプローチ、それらを使った吉田敦彦氏による日本神話の研究なども紹介され、とても興味深い充実した一冊でした。

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