網野善彦「日本の歴史をよみなおす」

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)
網野 善彦
筑摩書房
売り上げランキング: 2,356

中世の漂泊の民にスポットを当て、新たな史観を切り開いた歴史学者網野善彦の著作。
とても読みやすい。
日本の歴史の大転換点は14世紀~15世紀の南北朝動乱期にあった。
・近世の村につながる惣村が生まれた
・平仮名交じり文が一般に普及した
・日宋、日明貿易によって銭が大量に輸入され、貨幣経済が成立した。
・市場や金融はそれまで神仏の関わる神聖なものとして捉えられていたが、14~15世紀に権威が崩壊し世俗的なものとなった。
・鎌倉新仏教が誕生した。鎌倉新仏教は古い神仏とは異なり、新しい考え方に聖なる意味を付与する方向で動いていた
→日本における「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」のような鎌倉新仏教と商業、金融あるいは手工業とのかかわり
・ケガレを恐れ、畏怖する意識が消え、ケガレを嫌悪する意識が強くなり、被差別階級が生まれる
・女性の地位の低下
・天皇の権威は低下しつつも、後醍醐天皇の親政は生き残ることが出来た転換点だった。
ここまでが上巻部分
ここから下巻
・百姓は農民ではない。かなりの比重で非農業従事者がいた
・縄文文化は孤立して成立したわけではなく、多文化との交流は盛んだった。
・東日本は縄文文化、西日本は弥生文化
・古代日本国は中国の制度を真似て農本主義と陸上交通の重視による街道の整備を行ったが、もともと海上交通が中心の社会だったため程なくして再び海上交通が主流になった。
・荘園は農業経営の単位ではなく、様々なものが地代として納められており、商業によって成り立っていた。
・各荘園、村とも農業力が低くとも交易で栄え、商人のネットワークが発達していた。
・神社など公権力は商人などに神人という称号を与えて組織化していた。
・貨幣経済の発展によって、商人のネットワークが強化され、交通、流通を管理する人々の動きが活発化した。また、それら独立した組織を鎌倉幕府などの公権力は「悪」として弾圧しようとしたが、その一方で北条氏などそれらの組織と手を結び力をつける勢力も生まれる。
商人、金融業者を北条氏は支配下に治めたが、海上勢力との対立が長期化し、その反乱などで疲弊して鎌倉幕府は滅びた。
後醍醐天皇は海上勢力を味方にしていた。
後醍醐天皇に始まり、室町幕府の足利義満までの間で、農本主義から重商主義への転換が行われた。
ということを分かりやすく書かれている訳ですが、本当に面白かった。
どうしても鎌倉以降は武士中心の歴史観になりがちで、自分でもその知識の偏りに違和感を覚えていました。
農民を軽視し過ぎという批判もあるようですが、こういう漂泊の民だったり、タブーに近いところから新しい日本像を見出す試みはとても興味があります。
網野先生は15世紀と並んで現代が大きな転換点だと繰り返し主張しておられますが、今を自分なりに切り取ることが出来る様に、日本のかつての様々な姿をじっくりと見ていこうと思います。

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